失敗しない不動産相続

一次相続ゼロでも安心できない?|二次相続が重くなる不動産相続の例

一次相続ゼロでも安心できない?|二次相続が重くなる不動産相続の例

目次

一次相続がゼロなら、分け方はそれでよい?

「配偶者が全て相続すれば、一次相続の税額はゼロになるなら、それでよいのでは」と考えることがあります。

ただし、配偶者の固有財産と一次相続で取得した財産が次の相続まで残れば、二次相続で子どもが負担する税額は大きくなります。生活資金や、賃貸不動産の管理・修繕も同時に確認が必要です。

ここでは、沖縄県内の自宅と賃貸不動産を持つ家族の架空ケースで、3つの分け方を比べます。
特定の分け方を勧めるものではなく、比較するときの順番を整理する教材です。

今回の架空ケース

父(79歳)が亡くなり、妻、沖縄県内に住む長男、県外に住む長女が相続人になる想定です。
父の資産は相続税評価額ベースで1億7,000万円、借入は1,000万円で、正味遺産は1億6,000万円とします。

妻には、相続とは別に3,000万円の固有財産があります。
賃貸不動産は年間家賃約420万円のRC造で、借入残高のほか、屋上防水・外壁・給排水などの将来修繕が論点です。

項目 教材上の仮定
自宅土地・建物 5,000万円
賃貸不動産土地・建物 7,000万円
現預金 5,000万円
賃貸不動産の借入 ▲1,000万円
正味遺産 1億6,000万円
妻の固有財産 3,000万円

評価額と売却時価は同じではありません。この表には小規模宅地等の特例、貸家建付地などの個別土地評価、贈与、保険金、生活費、修繕費を反映していません。

配偶者の税額軽減は、一次相続だけを比べる制度ではない

配偶者が実際に取得した財産には、一定の範囲で配偶者の税額軽減が使われます。一般に、法定相続分または1億6,000万円までのいずれか多い金額までを基準に、配偶者の相続税額を軽減する制度です。

今回のように妻が正味遺産1億6,000万円を全て取得する前提では、一次相続の妻の税額はゼロとして比較できます。しかし、制度が一次相続の税額を軽くしても、次に誰へ何が移るかまでは決めません。

遺産分割が申告期限までにまとまらない場合の取扱いや、特例の適用には別の条件があります。制度の適用可否と申告書類は、実際の財産・分割内容を税理士へ確認します。

3案を一次・二次相続で比べる

比較するのは、A: 妻が全額取得、B: 妻と子が半分ずつ取得、C: 自宅と生活資金を妻、賃貸不動産を承継する長男へ寄せ、長女には現金を配分する案です。

二次相続は、妻の固有財産3,000万円と、一次相続で妻が取得した財産がそのまま残る教材上の仮定で計算しています。実際には生活費、介護費、資産価格、収支、相続時点で結果が変わります。

案 一次相続の概算 二次相続の概算 二次までの合計 税額以外の確認点
A: 妻が全額取得 0万円 約3,040万円 約3,040万円 妻が賃貸管理・借入・修繕判断を担う
B: 妻と子が半分ずつ取得 約860万円 約960万円 約1,820万円 生活資金と子の納税資金を別に残す
C: 役割に合わせて分ける 約1,180万円 約470万円 約1,650万円 長男の承継能力と長女への現金調整を確認する

この概算では、Aは一次相続の納税がありません。一方で、妻の固有財産を含めた約1億9,000万円が二次相続で子2人へ移るため、二次相続の概算が約3,040万円になります。

BとCは一次相続にも税額が生じますが、妻に残る財産が小さくなる分、二次相続の前提は変わります。税額が少ない案を結論にするのではなく、誰が何を管理し、どの現金を残すかを表の右端まで比べることが大切です。

賃貸不動産は、税額表だけでは分けられない

賃貸不動産を共有にすると、修繕、借入、賃料の使途、売却などで相続人の意思確認が続きます。県外に住む長女に共有持分が残る場合は、現地確認や合意形成の方法も先に決める必要があります。

特にRC造では、台風・塩害、屋上防水、外壁、給排水の更新がまとまった支出になることがあります。家賃収入だけで承継の可否を判断せず、修繕履歴、空室、管理費、借入残高、返済予定表を一緒に見ます。

C案のように物件を承継する人へ寄せる場合も、長男へ負担を押し付けるための案ではありません。借入承継の条件、管理会社との役割、長女への現金配分が説明できるかを確認するための比較案です。

確認は「生活資金→管理→税額」の順で

最初に、妻が自宅で暮らし続けるための預金、年金、年間生活費、医療・介護の予備費を一覧にします。生活資金と納税資金、賃貸不動産の修繕資金を同じ残高として数えないことが出発点です。

次に、登記事項証明書、固定資産税課税明細書、名寄帳、借入残高証明、返済予定表、賃貸借契約、管理会社の収支、修繕履歴を集めます。誰が判断と現地対応を担うかを、評価額とは別に確認します。

その後に、3案ごとの取得財産、一次相続税、二次相続税、現金残高、管理負担を同じ表で比べます。税理士には税額・特例・申告期限を、司法書士などには分割や登記に関わる条件を確認します。

このケースから持ち帰れること

一次相続の税額がゼロでも、二次相続までの合計負担が小さいとは限りません。
配偶者の固有財産と一次相続で取得する財産を、分けて一覧にして把握することをオススメします。

不動産は評価額だけでは分けられません。
借入、空室、修繕、管理を担う人、県外相続人との共有を残すかどうかを、税額と同じ表で確認します。

個別の結論は、財産評価、遺産分割、生活設計、相続時点の事情で変わります。このケースを、家族で必要な資料と比較条件をそろえるための入口として参考にしてみてください。

 

参考資料:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減、国税庁 No.4152 相続税の計算、国税庁 No.4205 相続税の申告と納税、国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告

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