4,200万円ちょうどなら、相続税は関係ない?
「母の土地と預金を足すと4,200万円ほど。相続税はかかるのか、申告は必要なのか」
長男と長女は、まず手元の資料を集め始めました。
売却時価の目安は約6,600万円ですが、相続税の計算に使う仮の金額は4,200万円です。子2人の基礎控除も4,200万円で同額になるため、少しの確認漏れで結論が変わる境界線にあります。
この記事では、基礎控除の境界線にいる家庭が、土地・預金・家族名義口座をどの順番で集計するかを整理します。
税額を決めつけず、申告要否を確かめるための確認資料と次の選択肢・確認条件を把握できます。
数字が同じでも、売却時価と相続税評価額のどちらを基礎控除と比べればよいのでしょうか?
売却時価6,600万円でも、最初に比べるのは4,200万円
相続税では、売却時価ではなく相続税評価額で集計した財産と基礎控除を比べます。
相続税は、不動産会社の査定額へそのまま税率を掛けて計算するものではありません。
売却時価は売るときの目安、相続税評価額は税金を計算するための金額であり、土地は路線価や評価倍率、形や道路への接し方、利用状況を踏まえて求めます。
今回の架空ケースでは、売却時価の合計は約6,600万円ですが、仮の相続税評価額合計は4,200万円です。子2人の基礎控除も4,200万円です。
数字が同額だからこそ、売却時価の大きさではなく、何を集計に入れるかが判断の分かれ目になります。
この違いを自分の家庭へ当てはめるには、まず誰のどの財産を一覧にすればよいのでしょうか?
今回の教材ケース:長男と長女のケース
今回の確認対象は、母が残した土地・月極駐車場・現預金と、相続人である兄妹2人の情報です。
沖縄県中南部の自宅と月極駐車場、現預金を残した80歳の母の相続を想定した架空ケースです。
相続人は沖縄県内に住む長男と県外在住の長女の2人で、手元の資料から集計した相続税評価額は4,200万円です。
子2人の基礎控除も4,200万円のため、相続税がかからないと考えたくなりますが、家族名義の預金、死亡保険金、過去の贈与、土地の正式評価を確認しなければ申告要否は判断できません。
| 家族 | 暮らしている場所 | 今回の確認ポイント |
|---|---|---|
| 長男 | 沖縄県内・母の自宅近く | 自宅をすぐ売らず、まず申告が必要かを正確に確かめたい |
| 長女 | 県外 | 共有したままにせず、資料と分け方を同じ条件で確認したい |
| 財産 | 売却時価の目安 | 相続税評価額 | このケースでの見方 |
|---|---|---|---|
| 自宅土地 | 3,800万円 | 2,100万円 | 売却時価は査定の仮定。相続税評価額は路線価方式による教材上の仮定で、面積・形状・接道・居住状況で変わる |
| 自宅建物 | 600万円 | 300万円 | 相続税評価額は固定資産税評価額を使う教材上の仮定。売却時価とは目的が異なる |
| 月極駐車場用地 | 800万円 | 400万円 | 境界・接道・利用状況が未確認。売却や分け方を考える前に、正式な土地評価と収支を確かめる |
| 現預金 | 1,400万円 | 1,400万円 | 母名義で確認できた残高の仮定。家族名義口座や定期預金の確認前の金額 |
| 合計 | 6,600万円 | 4,200万円 | 相続税は右側の金額を基に考える |
沖縄県中南部では、周辺の取引価格が上がっても、先祖や親から受け継いだ自宅をすぐ売るとは限りません。県外在住の相続人がいる場合は、共有のままでは売却や修繕の判断に時間がかかります。
価格、家族の希望、使える現金を一つの数字に混ぜず、順番に見ます。
4,200万円という同額を前に、どこまでを仮集計として扱い、何を判断保留にすべきでしょうか?
4,200万円ちょうどが、判断を難しくする
仮集計として扱うのは、手元資料で作った4,200万円までです。家族名義口座などは確認が済むまで結論を保留します。
仮の相続税評価額合計も4,200万円です。基礎控除との差は0円です。
ここでは課税遺産総額と相続税の概算は0円ですが、これは手元の資料だけで作った仮の集計です。
家族名義の預金、死亡保険金、過去の贈与、土地の正式評価を確認しなければ、申告要否は判断できません。
基礎控除を少しでも超えるかどうかの家庭では、節税策を急いで選ぶより、財産の漏れと計算の前提を先にそろえることが重要です。
4,200万円の仮集計では、まず誰を税法上の相続人として数え、基礎控除をいくらと置けばよいのでしょうか?
子2人なら、基礎控除は4,200万円
このケースでは、母の子である長男と長女の2人を税法上の相続人として数え、基礎控除は4,200万円です。
税金の計算前に差し引ける金額(基礎控除)は、3,000万円+600万円×税法上の相続人(法定相続人)の数で計算します。このケースでは子2人を数えるため、3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。
戸籍に名前がある家族を機械的に数えるのではなく、相続放棄や養子の有無を含めて税法上の人数を確かめます。
今回の前提が変われば、基礎控除も変わるため、財産の合計だけを先に見ても結論は出ません。
基礎控除を確かめた後は、どの財産をどの金額で並べれば比較できるのでしょうか?
土地と預金を、相続税評価額で集計する
土地・建物は相続税評価額で、預金は死亡時点の残高で、同じ一覧に並べます。
土地・建物は、売却時価ではなく相続税評価額で集計します。
今回の不動産3件の相続税評価額は合計2,800万円、現預金は1,400万円で、仮集計は4,200万円です。
| 比較する金額 | 金額 | この段階で分かること |
|---|---|---|
| 売却時価の合計 | 6,600万円 | 売る場合の目安であり、相続税の計算値ではない |
| 相続税評価額の合計 | 4,200万円 | 手元資料で作った仮の集計 |
| 基礎控除 | 4,200万円 | 子2人の前提で差し引ける金額 |
| 税率をかける対象の金額(課税遺産総額) | 0円 | 追加・控除項目を反映する前の概算 |
| 相続税の概算 | 0円 | この教材上の仮定による結果 |
【税理士確認】自宅土地の評価を下げられる制度(小規模宅地等の特例)を使う場合、税額が0円でも申告書の提出が必要になることがあります。「税額が0円の見込み」と「申告書を出さなくてよい」は、同じ意味ではありません。
仮集計が同額でも、なぜ申告不要と言い切れず、どの条件が結論を変えるのでしょうか?
同額なら「申告不要」と言い切れない4つの理由
申告不要と言い切れないのは、加える財産や差し引く項目、土地の正式評価で結論が変わるからです。
| 確認項目 | 何が分からないか | 結論への影響 | 次に見る資料 |
|---|---|---|---|
| 家族名義の預金 | 長男・長女名義の口座に、母が資金を出し、管理していた預金がないかを確認していません。 | 仮集計が基礎控除と同額のため、母の財産と判断される預金が加われば、申告要否が変わる可能性があります。 | 家族名義口座の通帳、届出印、入出金履歴、資金の出所と実際の管理者を時系列で確認します。 |
| 土地の正式評価 | 自宅と駐車場用地について、路線価、面積、奥行き、形状、道路への接し方、利用状況を使った正式な計算をしていません。 | 教材上2,500万円とした土地評価額が変われば、基礎控除との比較結果も変わります。 | 固定資産税課税明細書、名寄帳、登記事項証明書、公図、測量図、路線価図をそろえて評価します。 |
| 死亡保険金と借入・未払金 | 死亡保険金の契約関係と、相続開始時点の借入金・未払金・葬式費用を仮集計へ入れていません。 | 保険金の扱いと差し引ける金額によって、相続税の計算に使う金額が増減する可能性があります。 | 保険証券、保険金支払通知書、残高証明書、請求書、領収書をそろえ、契約関係と金額を確認します。 |
| 相続開始前の贈与 | 母から子への送金や贈与について、時期、金額、契約書、申告状況を整理していません。 | 相続税の計算へ加算する必要がある贈与があれば、基礎控除を超える可能性があります。 | 贈与契約書、贈与税申告書、過去の通帳と送金履歴を確認し、税理士へ対象期間と扱いを確認します。 |
土地は、道路への接し方、形、使われ方で評価が変わります。
沖縄では、先祖土地や親族が利用してきた土地を残したい気持ちが強く、価格だけで売却を決めにくいこともあります。さらにRC造(鉄筋コンクリート造)の建物を引き継ぐ場合は、台風や塩害、経年劣化を含む維持管理費も、相続後の分け方と一緒に確かめる必要があります。
確認項目が分かったら、10か月の期限に間に合わせるには、誰がどの資料から集めればよいのでしょうか?
10か月の期限から逆算して資料を集める
長男は土地と役所資料を、長女は金融機関と送金資料を集め、二人で保険・債務・贈与資料を一つにします。
相続税の申告と納税には、通常、相続開始を知った日の翌日から10か月という期限があります。仮集計が基礎控除と同額なら、申告が必要になってから資料を集め始めるのでは遅れるおそれがあります。
- 戸籍関係書類で、税金の計算上の相続人が長男と長女の2人かを確認する
- 固定資産税課税明細書と名寄帳で、自宅と駐車場用地を一覧にする
- 各金融機関の残高証明書と家族名義口座の入出金履歴を集める
- 保険証券、借入・未払金の資料、過去の贈与資料を同じ一覧へ加える
- 土地資料と財産一覧を税理士へ渡し、正式な評価と申告要否を確認する
この順番なら、長男が現地資料を集め、長女は通帳や送金履歴を共有するなど、県外在住でも役割を分けられます。
税額を一人で決めるのではなく、同じ財産一覧と資料を基に、税理士へ正式な評価と申告要否を確認します。
資料をそろえた後、別の家庭でも迷わないために、どの判断原則へ戻ればよいのでしょうか?
自分の家庭に当てはめる4つの原則
別の家庭でも迷わないために、次の4つの原則へ戻って確認します。
- 基礎控除は家族の人数ではなく、税金の計算上の相続人数で計算する
- 売却時価ではなく、相続税評価額と差し引ける金額を同じ表で比べる
- 基礎控除との差が小さいほど、家族名義口座・保険・贈与を先に確認する
- 税額が0円の見込みでも、申告要否と期限を別に確認する
このケースでは、まず戸籍で相続人を確定し、名寄帳・残高証明・家族名義口座の履歴を一つの一覧へ集めます。
その一覧で4,200万円との比較をやり直してから、税理士へ正式評価と申告要否を確認することが次の一歩です。

