人が入ってくる地域には、選ばれる理由がある
人が住むために移り、地域内で世帯をつくり、県外から泊まりに訪れ、居住地とは別の家を利用する。
こうした人の入りが見える地域には、生活、仕事、自然、観光、利便性など、選ばれる理由があると考えられます。
これは地域の魅力を考える大切な出発点です。
ただし、「住む」「所有する」「滞在する」は同じ需要ではありません。
人口増加、観光客数、地価上昇率の一つだけでは、誰が何のために使うかは分かりません。
人が入ってくる理由を、どう分けて見ればよいのでしょうか。
二次的住宅と宿泊密度は、同じ「域外需要」ではない
一つ目の補助指標は、2023年住宅・土地統計調査の二次的住宅率です。これは「二次的住宅戸数÷総住宅数」で算出しました。
二次的住宅には別荘だけでなく、仕事などの都合で時々寝泊まりする住宅も含まれます。別荘率や県外所有率と断定してはいけません。
それでも、居住地とは別に住宅を所有・利用する需要を推測する入口にはなります。
二つ目は、2025年の県外発地の国内旅行者による延べ宿泊者数を、2025年国勢調査速報人口で割った県外客宿泊密度です。
これは一般的な「観光客数」ではなく、地域規模に対する滞在需要の強さを見る指標です。
1人が2泊すれば2人泊として数えます。ホテル以外の宿泊も含み、日帰り客と原則として訪日外国人客は含まないため、通常賃貸や分譲の住宅需要そのものを示す数字ではありません。
| 指標 | 計算式 | 読めること | 読めないこと |
|---|---|---|---|
| 二次的住宅率 | 二次的住宅÷総住宅数 | 居住地以外の住宅利用・所有需要の手掛かり | 別荘率、県外所有者の比率 |
| 県外客宿泊密度 | 県外発地の国内延べ宿泊者数÷人口 | 外部からの宿泊を伴う滞在需要の強さ | 全観光客数、通常賃貸・分譲の需要 |
| 住宅地地価上昇率 | 市町村別平均変動率 | 需要が価格へ表れた度合い | 将来の値上がり、安全性 |
| 人口・世帯増減 | 2020年→2025年の増減率 | 地元生活実需の変化の手掛かり | 個別物件の賃料・空室率 |
所有される魅力と、滞在される魅力は別物です。
この違いを生活実需・価格の指標も含めて比べると、どのような輪郭になるでしょうか。
4指標による暫定・地域比較
下表は県内41市町村の暫定比較です。
住宅地地価上昇率の高い順に並べ、価格へ表れた需要と、所有・滞在・生活実需の関係を読みます。
二次的住宅率を取得できない自治体も外さず、値は「―」と表示します。これはゼロではなく、市町村値が未公表であることを示します。
| 市町村 | 住宅地地価上昇率 | 二次的住宅率 | 県外客宿泊密度(人泊/人) | 人口増減 | 世帯増減 |
|---|---|---|---|---|---|
| 宮古島市 | +11.2% | 0.80% | 40.6人泊/人 | -1.74% | +6.20% |
| 今帰仁村 | +11.2% | ― | 19.8人泊/人 | -1.50% | +2.54% |
| 恩納村 | +10.7% | ― | 165.3人泊/人 | +3.18% | +24.84% |
| 宜野座村 | +10.7% | ― | 8.1人泊/人 | +8.33% | +12.46% |
| 北中城村 | +9.4% | ― | 8.3人泊/人 | +0.46% | +7.90% |
| 金武町 | +9.2% | ― | 7.2人泊/人 | +3.20% | +6.66% |
| 北谷町 | +9.1% | 4.53% | 21.7人泊/人 | +0.83% | +6.04% |
| 与那原町 | +8.3% | ― | 2.7人泊/人 | -2.17% | +0.45% |
| 名護市 | +8.0% | 0.56% | 21.3人泊/人 | +3.98% | +10.50% |
| 中城村 | +7.4% | 0.43% | 2.6人泊/人 | +3.40% | +6.78% |
| うるま市 | +6.6% | 0.31% | 3.7人泊/人 | +2.50% | +12.09% |
| 豊見城市 | +6.5% | 3.41% | 5.8人泊/人 | +1.64% | +6.13% |
| 宜野湾市 | +6.4% | 0.22% | 6.5人泊/人 | +0.03% | +5.79% |
| 石垣市 | +6.1% | 0.41% | 50.0人泊/人 | +0.21% | +7.72% |
| 竹富町 | +6.0% | ― | 106.2人泊/人 | +0.53% | +10.70% |
| 八重瀬町 | +6.0% | ― | 2.9人泊/人 | +5.65% | +8.15% |
| 南風原町 | +5.6% | 0.12% | 2.4人泊/人 | +2.65% | +8.14% |
| 南城市 | +5.5% | 0.82% | 4.2人泊/人 | +2.97% | +7.56% |
| 浦添市 | +5.0% | 0.15% | 3.3人泊/人 | +0.02% | +3.85% |
| 那覇市 | +4.9% | 0.25% | 28.7人泊/人 | -2.06% | +4.78% |
| 糸満市 | +4.9% | 0.30% | 8.4人泊/人 | -0.56% | +4.80% |
| 東村 | +4.7% | ― | 6.9人泊/人 | -5.38% | -4.14% |
| 西原町 | +4.4% | ― | 2.1人泊/人 | +0.85% | +5.30% |
| 本部町 | +4.3% | ― | 68.8人泊/人 | -5.63% | -0.90% |
| 読谷村 | +4.1% | 0.62% | 14.7人泊/人 | +0.79% | +5.77% |
| 沖縄市 | +4.0% | 0.06% | 5.1人泊/人 | -0.60% | +4.84% |
| 嘉手納町 | +3.0% | ― | 2.5人泊/人 | -2.16% | +0.90% |
| 座間味村 | +2.6% | ― | 98.0人泊/人 | -6.95% | -4.79% |
| 大宜味村 | +2.6% | ― | 3.8人泊/人 | -8.09% | -1.83% |
| 渡嘉敷村 | +2.5% | ― | 59.7人泊/人 | -13.51% | -1.54% |
| 多良間村 | +1.7% | ― | 22.0人泊/人 | -11.34% | +2.79% |
| 国頭村 | +1.0% | ― | 32.5人泊/人 | -8.55% | +1.72% |
| 久米島町 | +0.6% | ― | 20.5人泊/人 | -10.78% | -6.11% |
| 粟国村 | 0.0% | ― | 12.1人泊/人 | -10.40% | -3.70% |
| 伊是名村 | 0.0% | ― | 15.1人泊/人 | -14.52% | -1.73% |
| 伊平屋村 | 0.0% | ― | 14.6人泊/人 | -6.75% | -2.51% |
| 渡名喜村 | 0.0% | ― | 19.7人泊/人 | -32.37% | -33.04% |
| 南大東村 | 0.0% | ― | 20.2人泊/人 | -8.79% | -0.59% |
| 北大東村 | 0.0% | ― | 25.0人泊/人 | -5.08% | +5.83% |
| 与那国町 | 0.0% | ― | 71.1人泊/人 | -9.90% | -0.66% |
| 伊江村 | -0.3% | ― | 11.9人泊/人 | -9.49% | -4.58% |
表の人口・世帯増減は、2020年国勢調査確報値から2025年国勢調査速報値への変化です。
速報値は要計表による集計で、後日公表される確定数と一致しない場合があります。
二次的住宅率が「―」の自治体は、推測やゼロ補完をせず、そのほかの4項目を比較します。
この「暫定」は、二次的住宅は2023年、その他は2025年の統計であるためでもあります。宿泊需要は住宅需要と同一ではありません。
表は、地域の優劣ではなく、需要の種類を発見する入口です。
特徴が出る地域をどう読み分ければよいでしょうか。
特徴が出る地域をどう読むか:北谷・恩納・名護・宮古島
北谷町は、二次的住宅率4.53%が比較対象で最も高く、地価+9.1%、宿泊密度21.7人泊/人でした。
観光客数だけでなく、居住地以外に住宅を持つ需要が相対的に見えやすい地域、と仮説を置けます。ただし所有者の居住地や利用目的は判別できません。
恩納村は二次的住宅の市町村値が得られないため対象外です。一方、宿泊密度は165.3人泊/人、地価+10.7%、人口+3.18%、世帯+24.84%でした。
北谷町が「所有需要」を観察しやすいのに対し、恩納村は「滞在したい」需要が圧倒的に強い構造です。通常賃貸の裏付けとは別に確認します。
名護市は宿泊密度21.3人泊/人、地価+8.0%、人口+3.98%、世帯+10.50%が同時に見られます。
地元生活実需と観光・移住・域外需要が重なる可能性があります。長期保有を考える場合も、雇用、供給計画、生活圏、取得価格の確認が前提です。
宮古島市は宿泊密度40.6人泊/人、地価+11.2%、世帯+6.20%が高く、人口は-1.74%でした。
人口だけでは説明しにくい域外需要を示唆しますが、観光動向や域外資金の変化に影響を受けやすい面もあります。一つの指標だけでは、物件ごとの需要の安定性は決められません。
うるま市・八重瀬町は、観光・二次的住宅を主軸に置かなくてもよい比較です。うるま市は人口+2.50%、世帯+12.09%、地価+6.6%です。
二次的住宅が未公表の八重瀬町も人口+5.65%、世帯+8.15%、地価+6.0%です。
数値の高低を「魅力の有無」と読まず、地元生活実需型として何を供給するかを考えます。
では、利用者ごとにはどの地域から確認を始めればよいでしょうか。
「誰の需要を狙うか」で読み方が変わる
| ターゲット | 重視する指標 | 確認を始める地域例 |
|---|---|---|
| 地元単身者 | 世帯増、雇用、通勤・生活利便性、賃料帯 | うるま市、沖縄市、宜野湾市、那覇市 |
| 地元ファミリー(増加型生活実需) | 人口・世帯増、学校・商業施設、生活圏の供給 | うるま市、八重瀬町、南城市、中城村、南風原町 |
| 地元ファミリー(既存生活圏型) | 世帯の絶対増、雇用・通勤、学校・買物、賃料帯・供給 | 那覇市、浦添市、宜野湾市 |
| 県外移住者 | 生活利便性、人口・世帯、地価、域外需要 | 名護市、読谷村、南城市、北谷町 |
| セカンドハウス | 二次的住宅率、宿泊密度、空港・生活アクセス | 北谷町、豊見城市、宮古島市 |
| 観光・短期滞在 | 宿泊密度、観光資源、季節変動、運営規制 | 恩納村、本部町、竹富町、石垣市、宮古島市 |
| 長期資産保有(都市生活圏型) | 世帯の絶対増、雇用・通勤、生活利便性、賃料帯・供給、地価 | 那覇市、浦添市、宜野湾市 |
| 長期資産保有(複合需要型) | 生活実需と域外需要の両方、地価、供給・収支 | 名護市、北谷町、南城市、読谷村 |
那覇市は人口が減少していても、2020年から2025年速報までに世帯が6,904世帯増えています。浦添市も人口はほぼ横ばいで、世帯は1,821世帯増です。
世帯増をファミリー増と断定はできません。増加率だけで地元ファミリーや長期保有の候補から外さず、既存生活圏の需要として雇用・通勤・教育・買物・供給を確認します。
那覇市・浦添市・宜野湾市は、域外所有需要の強さではなく、県都圏の居住・賃貸需要を長期にどう取り込めるかで見る「都市生活圏型」です。
地域名は推奨リストではありません。
北谷町は県外所有、恩納村は観光・長期滞在、名護市は生活実需と移住、うるま市・八重瀬町は増加型の地元居住者向けです。
那覇市・浦添市・宜野湾市は既存生活圏型、というように目的で読み方が変わります。
商品から市町村を選ぶ順番はどうするのでしょうか。
商品から逆算して、市町村を絞る
地元20〜30代向け1LDKなら、世帯増、雇用、通勤時間、同型物件の募集賃料と空室を確認します。
子育て世帯向け2LDK〜3LDKなら、人口・世帯に加え、学校、買物、駐車場、生活道路、将来の供給を見ます。うるま市、八重瀬町、南城市などは、生活実需の確認から入ります。
県外50〜60代向けセカンドハウスなら、二次的住宅率と宿泊密度に、空港アクセス、買物・医療、管理のしやすさを重ねます。北谷町や宮古島市の数字は仮説の入口で、所有目的や規制、出口の買い手像を省けません。
観光・短期滞在型なら、宿泊密度、観光資源、季節変動、運営体制、旅館業・民泊を含むルールを先に確認します。
恩納村、本部町、竹富町でも、住宅向け物件と同じ採算・稼働では評価しません。
最後に、共通する判断軸は何でしょうか。
まとめ:地域の優劣ではなく、需要の一致を見る
沖縄で「どこを買えばよいか」から始めるのではなく、まず商品を決め、利用者・購入者のターゲットを定めます。
次に必要な需要指標を選び、その需要が強い市町村を探し、最後に個別立地・価格・収益性・法規制を判断します。
人口が増えている、観光客が多い、地価が上がっている、のどれも単独では結論になりません。
二次的住宅を別荘と断定せず、宿泊需要を住宅需要と同一視せず、地価上昇を将来の値上がり保証にしないことが大切です。
4指標の比較表は地域の勝敗表ではなく、「その不動産を誰に使ってもらうのか」と地域の需要構造が一致しているかを考えるための入口です。
出典:二次的住宅率は総務省統計局「2023年住宅・土地統計調査 1-2-1 居住世帯の有無別住宅数」より算出。県外客宿泊密度は沖縄県「令和7年 県外からの国内客の動向」と「令和7年国勢調査速報」より算出。人口・世帯増減は同速報の2020年確報値と2025年速報値を使用。住宅地地価上昇率は沖縄県「令和7年市町村別・用途別平均価格及び平均変動率」の住宅地。二次的住宅の未公表値は推測していない。
