コラム

沖縄の住宅着工は貸家主導──おきぎん景況速報2026年4月から読む供給環境

沖縄の住宅着工は貸家主導──おきぎん景況速報2026年4月から読む供給環境

目次

おきぎん経済研究所が公表した「おきぎん県内景況・速報(2026年4月分)」をもとに、不動産投資家・オーナーの視点から読み解いた記事です。

住宅着工は増えているのに、なぜ建設関連は「ふつう」なのか?

2026年4月のおきぎん景況速報では、県内景況は「拡大基調」と判断されました。
一方で、建設関連の判断は「ふつう」です。

では、住宅投資は強いのでしょうか。
それとも、建設全体はまだ慎重に見るべきでしょうか。

この記事では、住宅着工、公共工事、建設資材の3つから、沖縄不動産の供給環境を整理します。

まず結論から。おきぎん住宅投資・3つの読み方

住宅着工は1,177戸、前年同月比1.9%増でした。
数字だけ見ると小幅増ですが、8カ月連続で前年を上回っています。

② 増加の中心は貸家です。
貸家は43.5%増の一方、持家は44.2%減分譲住宅は27.3%減でした。

③ 建設全体は強いと一括りにできません。
公共工事請負金額は0.2%減、生コンは8.9%減、セメントは8.5%減です。

なぜそうなっているのか。住宅投資と建設関連を分けて読む

住宅着工は8カ月連続増、でも伸びは小さい

まず確認したいのは、住宅着工の月次推移です。
着工戸数は増えていますが、直近の伸びは大きくありません。

着工戸数 前年同月比
2025/3 1,155 81.0%
2025/4 1,034 21.4%
2025/5 406 △49.5%
2025/6 644 △33.1%
2025/7 781 △18.2%
2025/8 816 9.7%
2025/9 1,055 30.2%
2025/10 1,035 14.2%
2025/11 875 14.2%
2025/12 988 15.2%
2026/1 650 24.5%
2026/2 915 51.2%
2026/3 1,177 1.9%

※出典:国土交通省「住宅着工統計」(おきぎん経済研究所資料より)

2026年3月は1,177戸で、前年同月比1.9%増でした。
年度累計でも前年比4.4%増となっています。

では、増えているなら安心してよいのでしょうか。
ここで大切なのは、合計よりも中身です。

全体は小幅増でも、利用別ではかなり差が出ています。

貸家は増え、持家と分譲は減っている

次に、利用別の内訳を見ます。
賃貸オーナーにとっては、ここが最も重要です。

利用関係 2026年3月 前年同月比
貸家 43.5%増
持家 44.2%減
分譲住宅 27.3%減
合計 1,177戸 1.9%増

※利用別の増減率は、おきぎん経済研究所「おきぎん県内景況・速報(2026年4月分)」による。

貸家は前年同月を大きく上回りました。
一方で、持家と分譲住宅は大きく減っています。

つまり、住宅投資の増加は、持ち家需要の回復というより、貸家主導の動きです。
賃貸経営では、需要があるかだけでなく、競合する新築賃貸が増えるかを見る必要があります。

新築供給が増えるエリアでは、築年数、駐車場、初期費用、設備条件の差が見られやすくなります。

公共工事は小幅減、建設資材も弱い

住宅着工だけでは、建設全体の温度は分かりません。
おきぎんは、公共工事と建設資材も合わせて見ています。

公共工事請負金額 前年同月比
2025/4 20,078百万円 41.1%
2025/5 21,968百万円 △2.0%
2025/6 26,348百万円 △22.7%
2025/7 42,763百万円 △5.6%
2025/8 54,259百万円 130.0%
2025/9 31,280百万円 △5.2%
2025/10 44,324百万円 80.0%
2025/11 27,096百万円 1.6%
2025/12 15,752百万円 56.6%
2026/1 13,220百万円 △37.0%
2026/2 96,827百万円 271.5%
2026/3 117,776百万円 △17.0%
2026/4 20,043百万円 △0.2%

※出典:西日本建設業保証沖縄支店「公共工事動向」(おきぎん経済研究所資料より)

2026年4月の公共工事請負金額は、200億4,300万円でした。
前年同月比では0.2%減です。

大きく悪化した数字ではありません。
ただし、建設関連全体を強いと判断するほどの伸びでもありません。

発注者別では、市町村、沖縄県、国は増えました。
一方で、その他公共的団体が大きく減っています。

生コンとセメントはともに前年割れ

さらに、建設資材の動きも確認します。
資材出荷は、現場の動き方を知る補助線になります。

生コン セメント
2025/4 4.1% 4.0%
2025/5 △5.1% △0.7%
2025/6 3.7% 3.5%
2025/7 △11.8% △10.2%
2025/8 △8.2% △8.3%
2025/9 △3.7% △15.0%
2025/10 △7.1% △15.5%
2025/11 △20.0% △16.6%
2025/12 △7.9% △9.5%
2026/1 △9.8% △7.5%
2026/2 △15.6% △12.1%
2026/3 △9.0% △8.6%
2026/4 △8.9% △8.5%

※出典:おきぎん経済研究所調べ。セメント出荷量は速報値で、確報にて修正される場合があります。

2026年4月は、生コンが8.9%減、セメントが8.5%減でした。
どちらも前年同月を下回っています。

ではなぜ、住宅着工は増えているのに、資材は弱いのでしょうか。

一つの見方は、住宅投資の一部が増えても、建設全体の現場量までは強くなっていないということです。
もう一つは、公共工事や民間工事の内訳により、資材需要の出方が変わることです。

賃貸オーナーにとっては、供給増だけでなく、建築費や修繕費の高止まりも確認したい局面です。

りゅうぎんレポートとは何が違うのか?

同じ2026年4月を対象に、りゅうぎん総合研究所も県内景気動向を公表しています。
ただし、ここではおきぎん資料を中心に、見方の違いだけを補足します。

比較項目 おきぎん景況速報 りゅうぎん景気動向
建設関連の表現 建設関連は「ふつう」 回復の動きが強まっている
住宅着工 1,177戸、1.9%増 同じ国土交通省データを使用
貸家 43.5%増 732戸、43.5%増と明記
補助指標 公共工事、資材出荷を重視 建築着工床面積、建設受注額も重視
読み方 強弱混在を確認しやすい 回復感を広く捉えやすい

※出典:おきぎん経済研究所「おきぎん県内景況・速報(2026年4月分)」、りゅうぎん総合研究所「県内の景気動向(2026年4月)」

両社で住宅着工の方向性は一致しています。
違うのは、建設全体をどう切り取るかです。

りゅうぎんは、建築着工床面積や建設受注額も含めて、回復の動きを見ています。
おきぎんは、公共工事や資材出荷の弱さも合わせて、「ふつう」と整理しています。

不動産投資家にとっては、どちらが正しいかを決めるより、両方の見方を使い分けることが大切です。
住宅投資は貸家主導で増えています。

ただし、建設全体を強いと一括りにしないことが、今回の重要な読み方です。

着工増を、賃貸市場の追い風だけで見てよいのか?

今回のおきぎん景況速報からは、3つのことが見えてきます。

① 住宅着工は前年を上回り、年度累計でも増えています。

② ただし、増加の中心は貸家で、持家と分譲は弱いです。

③ 公共工事と建設資材は弱く、建設全体は強弱混在です。

沖縄の住宅投資は、表面上は増加しています。
しかし、その中身は貸家に偏っています。

これは賃貸需要の強さを示す一方で、新築競合が増える可能性も示します。
オーナーは「需要があるから大丈夫」ではなく、自分の物件が選ばれる理由を確認する必要があります。

立地、駐車場、設備、初期費用、修繕対応は、今後さらに比較されやすくなります。

着工増のニュースを見たとき、あなたの物件は追い風を受ける側でしょうか。
それとも、競合供給に備える側でしょうか。

※出典:おきぎん経済研究所「おきぎん県内景況・速報(2026年4月分)」(2026年5月29日公表)、りゅうぎん総合研究所「県内の景気動向(2026年4月)」、国土交通省「住宅着工統計」、西日本建設業保証沖縄支店「公共工事動向」

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