コラム

数字で見る沖縄不動産の”実態”——2025年12月の市場温度計

目次

数字で見る沖縄不動産の”実態”——2025年12月の市場温度計

沖縄の不動産市場、2025年12月は何が変わった?

「空室は増える?」「金利の影響は?」「賃料は上げられる?」
実需・供給・コスト・賃料収益性の4つの指標を確認すると、
2025年12月の沖縄不動産市場で何が起きているかが見えてきます。

まず結論から。2025年12月の総合判定

2025年12月の沖縄不動産市場温度計は、総合スコア 30.7/100、判定は「弱含み」です。

※「弱含み」とは、市場が強い勢いを持っているわけではないが、急激に悪化しているわけでもない、じわじわと下方向への圧力がかかっている状態を指します。

※総合スコア(30.7)は2025年12月時点の統計データ(沖縄地銀プライムレート2.575%等)をもとに算出しています。2026年2月以降の金利変更はこのスコアに含まれていません。

① 実需(住宅購入ニーズ)は-8.8%(直近3か月平均の前年同期比)とマイナス水準が続いています。
ただし、改善方向が4か月連続で継続しており、底打ちを試す局面に入っている可能性があります。

② 賃貸新規供給は+22.8%と高い伸びを維持しており、供給圧力が強い状態が続いています。
※①持家着工は自己居住需要の代理指標、②貸家着工は賃貸供給量の指標であり、同一の需給市場を示すものではありません。

着工/世帯増倍率は1.15倍(2025年年次データ)で、均衡圏(0.8〜1.2倍)の上限付近に位置しています。倍率そのものは均衡圏内ですが、供給圧力の主因は前年比+22.8%の貸家着工増加にあり、1年〜1年半後の入居者獲得競争の激化が懸念されます。

③ 投資コストは沖縄地銀の短期プライムレートが2.575%で横ばい(2025年3月以降10か月継続)。
2024年以降に段階的な引き上げが行われており、借入コストはすでに上昇した水準にある点に注意が必要です。

【記事執筆時点の情報】
上記スコアの算出根拠は2025年12月時点の2.575%です。2026年2月2日付でさらに0.25%引き上げ(→2.825%)が実施済みであり、記事執筆時点のコスト環境はさらに厳しい状態にあります。投資用ローンの収支計算は2.825%ベースで見直すことが必要です。

④ 賃料・収益性は「収益中立」(41.7/100)
賃料改定の余地は均衡状態にある一方で、沖縄県では修繕費の上昇が賃料上昇を上回っており(+0.8pt)、実質的な手取り収益への下押し圧力が確認されています。

4つの軸で読む2025年12月の変化

住宅購入ニーズの今(実需環境)

住宅の着工件数を「直近3か月の平均が前年同期3か月の平均とどう変わったか」で見ると、-8.8%です。

前年比がマイナスということは、去年と比べて沖縄での新しい住宅着工が少なくなっている状態です。
住宅の購入・建築意欲が弱含んでいることを示す代理指標として読むことができます。

ただし、この数字の変化方向は4か月連続で改善しています(直近3か月の平均と前年同期3か月の平均の比較ベース)。水準こそまだマイナス圏にありますが、悪化のペースが緩やかになりつつある点は注目に値します。「底打ちした」とは断言できませんが、底打ちを試している可能性がある局面と読めます。

持家着工の前年比がプラスに転じ、それが2か月以上続いた時点で、実需回復の初動が確認できます。

賃貸物件はどれだけ増えているか(賃貸新規供給圧力)

賃貸住宅(貸家)の着工件数は直近3か月の前年比で+22.8%と、去年より大幅に多い状態が続いています。
供給拡大の方向が4か月連続で継続しており、勢いの強さが伺えます。

「着工が増えた」ということは、そこから1年〜1年半後に建物が完成し、入居者の募集が始まります。
つまり今の供給増加は、1年〜1年半後の入居者獲得競争の激化につながりやすい状況といえます。

また、2025年の年次データによる着工/世帯増倍率は1.15倍で、均衡圏(0.8〜1.2倍)の上限付近に位置しています。
倍率自体は均衡圏内ですが、+22.8%という高い着工増加ペースが続けば均衡を上回るリスクがあり、空室率への上振れ圧力が蓄積しやすい状態といえます。

貸家着工の前年比が2か月連続でマイナスに転じた時点が、供給圧力の緩和シグナルとなります。
現状ではその兆しはまだ見られません。

借入・建築費・地価の動き(投資コスト圧力)

投資用ローンの基準となる沖縄地銀の短期プライムレートは2.575%で、2025年3月17日の引き上げ以降10か月横ばいを維持しています。
このレートが上がると投資用アパートローンの基準金利が上がりやすくなる仕組みです。

【記事執筆時点の情報】
2026年2月2日付でさらに0.25%引き上げ(→2.825%)が実施済みです。投資用ローンの収支計算は2.825%ベースで見直すことが必要です。

現時点では横ばいが続いていますが、2024年以降の段階的な引き上げ(2.175%→2.575%)により、借入コストはすでに上昇した水準にあります。「横ばいだから安心」ではなく、「高い水準のまま継続している」という理解が重要です。

なお、居住用住宅ローンの参考指標であるメガバンク変動金利は0.79%です。
こちらはあくまで居住用住宅ローンの指標であり、投資用アパートローンの実行金利とは別物です。
投資用ローンを検討する際は、沖縄地銀のプライムレートを基準に考えることが大切です。

建築費は前年比+2.2%の上昇基調が続いており、地価も+5.7%(2025年年次データ)と上昇しています。
新規取得コストが着実に上がっている点は、表面利回りを計算する際に意識しておきたいポイントです。

賃料と収益性の環境(賃料・収益性)

総務省の消費者物価データ(CPI)をもとに、3つの視点で賃料・収益性の環境を確認しています。
※①は那覇市の住居CPIが個別公表されているため那覇市データを使用。②③は那覇市単体のデータが非公表のため沖縄県データを使用しています。

① 賃料改定余地(那覇市)
那覇市の住居物価の上昇率から、那覇市全体の物価上昇率を差し引いた指標です(-0.5pt)。
住居物価が全体物価と同水準かやや下回っており、賃料の引き上げには慎重さが必要な均衡状態といえます。
過度な値上げは入居者離れを招きやすいため、慎重な対応が求められます。

② 利回り圧迫(沖縄県)
修繕費の上昇率から賃料の上昇率を差し引いた指標です(+0.8pt)。
修繕や管理のコスト上昇が賃料上昇を上回っており、手取り収益に下押し圧力がかかりやすい状態です。
修繕コストの見積もりは保守的に設定することが望ましいといえます。

③ 入居者負担圧力(沖縄県)
食料・光熱水道費の上昇が全体物価を上回っている度合いを示す指標です(+0.5pt)。
生活必需品の値上がりが続いている中で、家賃以外の支出が増えており、入居者の生活コストが上昇傾向にある状態です。
入居者の可処分所得が圧迫されやすい環境であることも、賃料改定の際に考慮したいポイントです。

数字で確認する。2025年12月の判断材料サマリー

水準 変化方向 継続 転換点の読み方
実需環境(持家) 需要軟化(-8.8%) 改善 4か月 底打ちを試す局面
賃貸新規供給圧力 供給やや過多(+22.8%) 拡大 4か月 供給戻りが続いている
投資コスト圧力 負担重め(2.575%)
※執筆時点: 2.825%実施済み
横ばい 6か月(シグナル)
金利水準は2025-03以降10か月同水準
緩和ではなく高止まり継続
賃料・収益性 収益中立(R軸スコア: 41.7/100)
※賃料改定余地・修繕費上昇・テナント支払余力の
3指標を合成したスコアです
CPI水準指標のため方向追跡なし

来月に何を見るか

① 実需(上振れ条件)
改善方向が4か月継続しており、底打ちの可能性が高まっています(直近3か月平均vs前年同期3か月平均での比較ベース)。
持家着工の前年比がプラスに転じ、その状態が2か月以上続いた時点で実需回復の初動として確認できます。
現在は-8.8%とマイナス水準にありますが、方向感の改善が続いている点は注目に値します。

② 供給(下振れ条件)
貸家着工の前年比が2か月連続でマイナスに転じた時点で供給圧力の緩和シグナルとなります。
現状では拡大方向が4か月継続しており、空室率への上昇圧力が蓄積しやすく、賃料の方向感も不確実性が高い状態です。
供給圧力が緩和に向かう兆しはまだ見られません。
着工/世帯増倍率(現在 1.15倍・均衡圏上限付近)が1.0倍方向へ収束するかどうかも、来年の年次データで確認したいポイントです。

③ コスト(金利・建築費シグナル)
沖縄地銀3行は2026年2月2日付で短期プライムレートをさらに0.25%引き上げ、2.575%→2.825%に改定済みです。
すでに上昇した借入コストにさらなる上乗せが加わるため、投資用ローンの収支計算は2.825%ベースで見直すことが必要です。
建築費は現在+2.2%の伸びが続いており、+5%超に達した場合は新築収支の前提が崩れやすくなるため、動向を継続して確認することが大切です。

④ 賃料・収益性(R軸悪化条件)
修繕費の上昇が賃料上昇を上回っている状態(+0.8pt)が続いており、実質的な収益環境が悪化しやすい状態です。
修繕費前年比と賃料前年比の差が縮小・逆転に向かう月が改善シグナルとなります。
また、2025年12月時点では那覇市の住居CPIが総合CPIを下回っており(−0.5pt)、賃料改定余地が限定的な状態でした。
その後の動向はCPIを月次で追って確認することが大切です。

まとめ。あなたの物件は2025年12月の市場環境に対応できていますか?

2025年12月の沖縄住宅市場を4つの軸で整理すると、次のような状態といえます。

  • 実需(購入ニーズ)
    着工件数は前年比マイナスが続いており、住宅を買う人が少ない状態が続いています。実需が弱い局面では、物件を売却する際に買い手がつきにくくなりやすい点を意識しておくことが大切です。改善方向が4か月継続しており底打ちの可能性はありますが、着工件数が前年を上回る状態が続くまでは、出口戦略を慎重に検討することが望ましいといえます。
  • 供給(競合物件)
    前年比+22.8%と高い伸びが続いており、1年〜1年半後の竣工・入居募集に向けた競争激化が蓄積している局面です。空室対策・リフォーム・賃料設定の見直しを前倒しで検討することが大切です。
  • コスト(借入・建築費・地価)
    横ばいが続いているとはいえ、借入コストはすでに上昇した水準にあります。金利が再び上昇方向に転じた場合の収支へのインパクトを試算しておくことが有効です。
  • 賃料・収益性
    修繕費の上昇が賃料上昇を上回っており、手取り収益が圧迫されやすい環境です。修繕コストの見積もりを保守的に設定し、賃料改定の余地が限られていることを前提とした収支管理が重要になります。

供給増加・修繕費上昇・借入コスト高止まりが重なるこの局面で、あなたの物件の空室対策・コスト管理・賃料設定は、2025年12月の市場環境に対応した状態になっていますか?

出典:国土交通省「建築着工統計調査」、総務省「住民基本台帳に基づく人口・世帯数」、総務省「消費者物価指数(CPI)」、国土交通省「地価公示」、沖縄県「地価調査」、沖縄地銀(琉球銀行・沖縄銀行・沖縄海邦銀行)公表値。
本記事は情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。

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