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  • 相続対策で不動産を持つメリットが大きい人・小さい人

    相続対策で不動産を持つメリットが大きい人・小さい人

    相続税が少なくなっても、家族のお金が足りるとは限らない

    「現金で残すより、アパートにした方が相続に有利」。そう聞くと、不動産を持つこと自体が相続対策になるように感じるかもしれません。

    賃貸不動産は、家賃収入を生む資産を家族へ引き継げます。一定の条件では、現金で持つ場合より相続税評価額が低くなることもあります。

    ただ、購入後に現金がほとんど残らなければ、生活費や修繕費の支払いに困ることもあります。子どもが賃貸経営を引き継ぎたいかも、聞いておきたいところです。

    相続税が少なくなるだけでなく、必要なお金が残り、家族が無理なく管理できるかまで考えておきましょう。

    前回は、借入で不動産を持つ場合の収入・返済・分け方を比較しました。借入の有無にかかわらず、まず知っておきたいのが、現金と不動産の相続税評価の違いです。

    同じ金額の財産でも、現金と賃貸不動産では評価の仕方がどう違うのでしょうか。

    現金と賃貸不動産では、相続税評価の仕組みが違う

    現金は原則としてその金額で評価します。一方、賃貸不動産は土地と建物を分け、それぞれの評価方法と賃貸の状況に基づいて計算します。

    相続税評価額とは、相続税を計算するために求める財産の価額です。不動産の購入価格や、売却できる価格と同じではありません。

    預貯金は相続開始時の残高が基本となり、原則として税引後の既経過利子も加えます。既経過利子とは、その時点で解約した場合に受け取れる利息です。

    定期預金等以外で利子が少額の場合には、残高で評価できる取扱いがあります。残高証明等をそろえ、利息を含める必要があるか確認します。

    土地は、路線価がある地域では路線価を基に形状などを補正して評価します。路線価がない地域では、固定資産税評価額に所定の倍率を掛ける倍率方式を使います。

    自分の土地に所有するアパートを建てて貸している場合、その敷地は「貸家建付地」として評価することがあります。入居者の権利があり、所有者が土地や建物を自由に使えないことを評価に反映します。

    財産 評価の基本 賃貸による調整など
    現金・預貯金 現金の金額、預金残高と必要な利子調整 不動産のような賃貸による調整はない
    アパートの敷地 路線価方式・倍率方式で求める自用地としての価額 借地権割合・借家権割合・賃貸割合を使って調整
    貸している建物 原則として固定資産税評価額 借家権割合・賃貸割合を使って調整

    借地権割合と借家権割合は、土地や建物を借りる権利の価額を計算する際に使う割合です。対象地の路線価図・評価倍率表などで確認します。

    賃貸割合は、原則として相続開始時に貸している各独立部分の床面積で計算します。単純な入居戸数の割合と一致するとは限りません。

    一時的な空室を賃貸中として扱える場合もありますが、募集状況や前後の賃貸実態などの確認が必要です。空室なら必ず対象外、募集中なら必ず対象、とはいえません。

    また、財務省の令和8年度税制改正の大綱には、課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産の評価見直しが示されています。

    大綱では2027年1月1日以後に相続等で取得する財産への適用とされています。これから購入する場合は、取得時期や相続時期によって評価方法が変わらないか、税理士に確認しておきましょう。

    こうした見直しの対象にならず、一般的な土地・貸家の評価方法を使える場合、現金との差はどのくらいになるのでしょうか。

    仮の数字で、評価額の違いを確かめる

    ここで置く条件では、現金6,000万円に対し、一棟の賃貸不動産の評価額は3,160万円になります。どこで差が生まれるか、土地と建物を分けて計算してみます。

    同じ相続開始時点で、現金6,000万円を保有している場合と、6,000万円で購入した賃貸不動産を保有している場合を比べます。借入はないものとします。

    土地・建物を直接所有する一棟物件を想定し、一般的な貸家建付地・貸家の評価方法を適用できるものとします。前章の評価見直しは、この計算には織り込んでいません。

    比較するのは、現金で残すか、不動産に換えるかを考える6,000万円分だけです。購入諸費用や、別に確保する生活資金は含めていません。

    計算の前提 仮定する値
    土地の自用地としての評価額 3,000万円
    建物の固定資産税評価額 1,000万円
    借地権割合 60%
    借家権割合 30%
    賃貸割合 100%

    3,000万円と1,000万円は、購入価格の内訳ではなく、説明のために置いた評価額です。実際には物件ごとの資料から求めるため、沖縄の物件が一律にこの割合で評価されるわけではありません。

    土地の評価は、自用地としての価額から、借地権割合・借家権割合・賃貸割合に応じた額を差し引きます。

    土地:3,000万円×(1-60%×30%×100%)=2,460万円

    貸家の評価は、固定資産税評価額から、借家権割合と賃貸割合に応じた額を差し引きます。

    建物:1,000万円×(1-30%×100%)=700万円

    合計は2,460万円+700万円=3,160万円です。現金6,000万円との評価額の差は2,840万円となります。

    この2,840万円が、そのまま相続税の軽減額になるわけではありません。相続税は他の財産や債務、基礎控除、相続人の構成、税額控除などを踏まえて計算するためです。

    基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。まず家族全体の財産で課税の見込みを確認し、そのうえで評価の差が税負担へどう影響するかを税理士と確かめます。

    この例では小規模宅地等の特例も反映していません。区分マンション等に適用される評価補正も扱わず、個別の相続税額までは計算しません。

    相続税評価額が3,160万円でも、売却価格がその金額になるわけではありません。売却していくら残るかは、査定額から売却費用や税金などを差し引いて、別に見積もります。

    評価額が低くなるとしても、購入後にお金が足りなくなっては困ります。どのような備えがあれば、家族は安心して引き継ぎやすくなるでしょうか。

    現金と手残りがあり、引き継ぐ人も決まっている

    生活費や納税資金を別に残し、空室や修繕に備えるお金も用意しておけば、急な支払いにも対応しやすくなります。管理を引き受ける家族と、普段の仕事や暮らしと両立できるかも話しておきます。

    家賃収入を残したいなら、まずは経費を払った後にいくら残るかを見ます。家賃の総額から管理費、固定資産税、保険料、修繕費等を差し引きます。

    借入があれば返済も差し引き、所得税等と将来の修繕に備えるお金も見込みます。確定申告書の利益だけでなく、口座にいくら残ったかも確かめます。

    購入前には、親自身の生活費・介護費をどれだけ残すかも決めておきます。相続後の納税・修繕・分割に必要なお金も見積もり、その残りから購入に回せる額を考えます。

    納税と大規模修繕が同じ年に重なれば、両方のお金が必要です。同じ預金をそれぞれの支払原資として数えず、必要額と支払時期を書き出しておきます。

    家族には「アパートを残したい」と伝えるだけでなく、管理会社から連絡が来たら誰が対応するかも相談します。管理を委託しても、修繕にいくら掛けるかなど、所有者が決めることは残ります。

    一人が不動産を取得して他の兄弟にお金を渡すなら、そのお金をどこから用意するかも考えます。売って分ける案では、費用・税金等を引いた手残りと、売却に掛かる期間を調べます。

    沖縄の物件でも、賃貸需要や管理のしやすさは地域・建物ごとに異なります。土地の権利、接道、修繕履歴などを確認し、地域名だけで収益性や売りやすさを判断しません。

    反対に、現金や家賃の手残りが少ない場合、家族はどのような負担を抱えやすいのでしょうか。

    現金が乏しいと、修繕や分割の支払いに困ることも

    家賃だけで修繕費を賄えず、預金も少なければ、引き継いだ家族が自分のお金を出すことになりかねません。兄弟に渡すお金を用意できず、分割の話し合いが進まないことも考えられます。

    税負担をどれだけ減らせるかに加え、購入後や相続後の支払いにも目を向けてみましょう。

    気になる状況 家族に起こり得ること 先に確かめること
    他の財産等を含めても課税の見込みが小さい 評価が下がっても、税負担軽減の余地が小さい 財産全体と基礎控除、適用する特例
    購入後に使える現金が少ない 生活・介護・納税・修繕への対応が難しくなる 使途別の必要額と支払時期
    空室や修繕で収支が崩れる 家賃で支出を賄えず、家族の持ち出しが生じる 実収支と減収時の資金繰り、工事見積り
    家族が経営を望まない、担当が決まらない 連絡・意思決定・費用負担が家族の負担になる 各人の希望と管理委託の範囲
    分ける現金や売却の見通しが乏しい 分割案や納税資金の準備が進みにくい 分割案、査定根拠、売却後の手残り

    相続税がほとんど変わらなくても、経費を払った後の収入が家族の暮らしを支えることはあります。節税額が小さいからといって、保有する意味まで小さくなるとは限りません。

    反対に、評価の差が大きくても、購入費用や長年の持ち出し、売却時の損失が重なれば、家族に残る財産が減る可能性があります。

    相続時に税金が少なくなっても、その後の赤字が続けば負担は増えます。保有する期間をそろえ、受け取る家賃、修繕等の支出、最後に売却した場合の手残りまで比べます。

    配偶者が取得する場合は、配偶者が亡くなったときの二次相続まで確認します。最初の相続では税金が少なくても、次に子どもが引き継ぐときの負担が大きくなる場合があります。

    自分の家族で支払いに困らないかを調べるには、何の資料からそろえればよいのでしょうか。

    財産一覧と収支明細をそろえ、家族の希望を聞く

    まず財産一覧と預金残高をそろえ、生活費や納税などに必要な現金が残るかを確かめます。続いて収支明細と修繕予定を見ながら、誰が引き継ぐか、家族の希望を聞いてみましょう。

    確認する順序 そろえる資料・情報 判断すること
    財産と現金 財産・債務一覧、預金残高、生活・介護の資金計画 課税の見込みと、購入・保有に回せる資金
    収支と修繕 入金・支出明細、賃貸借契約、修繕履歴・見積り 家賃減少や工事支出があっても資金が足りるか
    評価と売却 路線価等、固定資産税評価資料、取得時期、査定・費用見積り 適用する評価方法と、売却時に残る額・時期
    承継と分割 家族別の希望、運営担当、分割案 誰が何を取得し、どの資金で負担を賄うか

    分からない金額は空欄にして、誰に聞くかを書き添えておきます。評価と税額は税理士、分割や権利関係は法律専門家、収支や修繕は管理会社、売却価格は不動産会社等に確認します。

    税理士には、取得時期が分かる契約書や評価資料を見せ、評価見直しの対象になるか、使える特例があるかも確認します。この記事の計算例を、そのまま自分の物件に当てはめないようにしましょう。

    家賃から必要な支出を払ってもお金が残り、引き継ぐ家族も経営に納得しているなら、不動産は暮らしを支える収入源になり得ます。持ち続けるのが難しくなったときに、売却できる見通しも持っておきたいところです。

    手始めに、購入後に残る現金、年間の手残り、次の修繕に掛かるお金を書き出してみてください。その数字を家族と見ながら、アパートを引き継ぎたいか、売って分けたいかを話してみましょう。

     

  • 沖縄の路線価はなぜ上がったのか。2026年の上昇要因をデータで読む

    沖縄の路線価はなぜ上がったのか。2026年の上昇要因をデータで読む

    国税庁が2026年7月1日に公表した「令和8年分 財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」をもとに、沖縄県の路線価上昇を不動産市場の視点から読み解いた記事です。
    令和8年分の路線価は、2026年1月1日を評価時点として定められています。

    路線価ニュースの概要

    2026年の沖縄県内路線価は、なぜ全国でも高い上昇率になったのでしょうか。

    沖縄県内の標準宅地の評価基準額は、対前年変動率の平均で 6.6%上昇 しました。
    上昇は 12年連続 で、全国平均の 2.9% を上回り、都道府県別では東京都に次ぐ高い水準です。

    県内で最も高い路線価は、那覇市久茂地3丁目の国際通りです。
    1平方メートル当たり 166万円 で、前年より 6.4% 上がりました。2002年以降、25年連続で県内最高地点となっています。

    ここで注意したいのは、路線価は土地の売買価格そのものではない点です。
    路線価は相続税や贈与税を計算するための評価基準です。一方、公示地価は、国土交通省が毎年1月1日時点を基準に判定し、例年3月ごろに公表する標準的な土地価格です。

    つまり、今回の記事では、路線価のニュースを入口にしながら、公示地価、人口、住宅着工、観光、建築費、開発計画を合わせて「なぜ上がったのか」を確認します。

    上昇した地域

    では、どの地域の上昇が目立ったのでしょうか。

    路線価は道路ごとの価格であり、市町村平均として横並び比較しにくい指標です。
    そのため、地域別の比較では、国土交通省の令和8年地価公示と、沖縄県不動産鑑定士協会の地価公示動向を主に使います。

    次の表は、2026年の地価公示で上昇が目立った市町村と、その背景を整理したものです。

    市町村名 変動率 主な用途区分 上昇の主な背景 要因の性質
    本部町 +22.1% 商業地 美ら海水族館周辺の観光需要、宿泊施設増加、国道449号沿線の店舗・宿泊需要、もとぶオアシス整備、本部港クルーズ期待 混合
    宮古島市 +13.7% / +11.9% 商業地 / 住宅地 中心商業地の供給不足、島外資本の投資需要、観光客増加、移住・別荘需要 混合
    北谷町 +9.7% / +8.4% 住宅地 / 商業地 西海岸側の都市型リゾート需要、移住需要、店舗・宿泊施設需要、国道58号沿いの高度利用 長期的
    宜野湾市 +9.7% / +8.2% 商業地 / 住宅地 西普天間地区の琉球大学病院移転、区画整理、普天間周辺の店舗需要、海浜エリアの投資需要 長期的
    南風原町 +9.3% 住宅地 那覇市のベッドタウン需要、供給の少なさ、生活利便性 長期的
    石垣市 +8.1% 商業地 730交差点周辺の観光需要、本土系企業の取得需要、中心部需要の波及 混合
    名護市 +5.3% / +4.4% 商業地 / 住宅地 市街地人口の増加、店舗需要、ジャングリア関連の住居需要、中心市街地整備への期待 混合
    那覇市 +7.1% / +5.3% 商業地 / 住宅地 国際通りの観光回復、オフィス・店舗需要、モノレール駅徒歩圏の住宅需要、供給不足 長期的

    この表を見ると、単純に「那覇だけが上がった」とは言えません。
    観光地、ベッドタウン、医療・大学移転エリア、離島、本島北部まで、上昇の理由が地域ごとに違います。

    路線価の代表例としては、那覇市久茂地3丁目の国際通りが県内最高地点です。
    また、名護市為又の名護バイパスは、路線価の県内上昇率トップとして 16.3%上昇 しました。
    ゆいレール沿線でも、対象となる17駅すべてで路線価が上昇し、赤嶺駅は 10.7%上昇 しました。

    上昇した理由

    沖縄の路線価上昇は、どのデータが影響したのでしょうか。

    主な理由は、次の6つに分けられます。

    1. 観光需要の回復は短期と長期の両方に効いている

    沖縄県の令和7年度入域観光客数は、1,093万5,800人 でした。
    前年度より 98万3,100人増、増加率は 9.9% です。年度ベースでは過去最高となりました。

    これは一時的な反動だけでしょうか。コロナ禍からの回復という意味では、一部は一時的です。
    ただし、国内客が過去最高で、外国人客も国際航空路線やクルーズ船の再開・新規就航で回復しています。

    そのため、国際通り、北谷、本部、宮古島、石垣などでは、ホテル、飲食、物販、観光関連施設の収益期待が地価を押し上げています。
    観光客が戻っただけでなく、観光消費を受け止める土地の希少性が高まっている点が重要です。

    継続可能性は中程度から高めです。
    ただし、航空運賃、為替、国際情勢、台風、クルーズ寄港の変動に左右されるため、観光だけを根拠に長期上昇を前提にするのは危険です。

    2. 住宅需要は強いが、買える価格には限界が見え始めている

    住宅地では、那覇市中心部から周辺市町村へ需要が波及しています。
    南風原町、宜野湾市、北谷町などで地価が上がる背景には、那覇市内の価格上昇と供給不足があります。

    人口そのものは大きく増えているわけではありません。
    沖縄県の2026年6月1日現在の推計人口は 145万6,462人 で、前月より81人減少しています。一方、総世帯数は 66万7,386世帯 で、前月より447世帯増えています。

    つまり、人口増だけで説明するより、世帯数の増加、家族構成の変化、移住需要、県外需要、利便性の高い住宅地の不足を合わせて見る必要があります。

    これは長期的要因です。
    ただし、建築費と土地価格が上がりすぎると、住宅を買える層が限られます。
    実際、地価公示の分析でも、建築費上昇により住宅取得を控える動きが見られるとされています。

    3. 建築費の高止まりが新築供給を重くしている

    地価が上がっているのは、新しく建てる人が増えて供給が増えていそうに見えます。
    しかし実際には、建築費や人手不足が重く、新築供給を増やすのは簡単ではありません。

    沖縄県の住宅着工統計では、2026年4月の新設住宅着工は 901戸 でした。
    単月の数字だけで市場全体を判断することはできませんが、建築費、施工人材、土地取得費が重い環境では、新築供給を増やすハードルが高くなります。

    国土交通省の建設工事費デフレーターも、建設コストを確認する基礎資料です。
    建築費の高止まりは、住宅価格や店舗・宿泊施設の採算に直接影響します。

    この要因は長期的です。
    資材価格、人件費、輸送費、金利がすぐに大きく下がるとは限らないためです。
    特に離島では、資材輸送と人手不足の影響が本島より強く出やすくなります。

    4. 再開発とインフラ整備は、地価の期待値を押し上げる

    那覇市では、旭橋駅周辺地区などで市街地再開発が進められてきました。
    モノレール駅、バスターミナル、業務、商業、宿泊、居住機能が重なる地域は、土地の使い道が多くなります。

    また、沖縄西海岸道路や浦添北道路II期線などの道路整備は、那覇空港、那覇港、中部西海岸、北部方面のアクセス改善に関係します。
    交通利便性が上がる地域では、住宅、商業、物流の需要が重なりやすくなります。

    この要因は長期的です。
    道路や再開発は完成まで時間がかかりますが、一度整備されると土地利用の前提が変わります。
    ただし、事業の遅れや建築費上昇で計画が見直されるリスクもあります。

    5. 北部ではジャングリア効果が期待先行で出ている

    本部町や名護市、今帰仁村周辺では、北部観光への期待が地価に影響しています。
    JUNGLIA OKINAWAは2025年7月25日に開業し、北部への観光動線や宿泊需要への期待を高めました。

    ただし、ここは慎重に見る必要があります。
    開業前後の期待は一時的要因を含みます。実際の来場者数、雇用、宿泊稼働、周辺消費が定着するかは、開業後のデータで確認する必要があります。

    一方で、美ら海水族館、本部港、宿泊施設整備、道路整備など、既存の観光基盤もあります。
    したがって、北部の上昇は「ジャングリアだけ」ではなく、観光拠点としての再評価と見る方が自然です。

    6. 土地取引件数は、価格上昇の持続性を見る補助線になる

    土地価格が上がっていても、取引が細っていれば、価格だけが先に走っている可能性があります。
    国土交通省は、登記情報に基づく土地取引の件数・面積を公表しています。

    沖縄では、観光・住宅・商業・物流の需要が重なる一方で、土地の供給は限られます。
    特に中心部、駅近、海沿い、観光地周辺では、売り物件が少ないこと自体が価格を押し上げます。

    ただし、今後は土地取引件数の変化を見ておく必要があります。
    件数が増えず価格だけが上がる場合、実需よりも期待や投資マネーの影響が強い可能性があります。

    データによる裏付け

    ここまでの話を、データ別に整理するとどう見えるでしょうか。

    データ 確認できること 路線価上昇との関係 要因の性質
    路線価 沖縄県平均+6.6%、12年連続上昇、国際通り166万円 相続税・贈与税評価に直接関係 結果指標
    公示地価 全用途+6.6%、住宅地+6.4%、商業地+7.3% 市場価格の基礎的な方向を示す 結果指標
    入域観光客数 令和7年度1,093万5,800人、過去最高 商業地・観光地・宿泊用地の収益期待を支える 混合
    推計人口・世帯数 人口は前月比減、世帯数は前月比増 世帯需要や住宅需要を確認する材料 長期的
    住宅着工統計 2026年4月の新設住宅着工901戸 供給量と建設需要の強さを確認する材料 短期から中期
    建設工事費デフレーター 建築費の高止まりを確認する資料 新築供給の制約、販売価格の上昇要因 長期的
    再開発・インフラ 駅周辺再開発、道路整備、港湾・観光拠点整備 利便性と土地利用の期待を高める 長期的
    土地取引件数 取引件数・面積の動向 価格上昇が実需を伴うか見る補助線 確認指標

    この表から分かるのは、沖縄の路線価上昇は一つの理由では説明できないということです。
    観光、住宅、建築費、供給不足、開発期待が重なっています。

    ただし、すべてが同じ強さで続くわけではありません。
    観光回復や大型施設開業への期待は、短期的に価格を押し上げやすい要因です。
    一方、土地の少なさ、交通利便性、世帯数の増加、建築費の高止まりは、長期的に価格を支えやすい要因です。

    今後の見通し

    今後も沖縄の路線価は上がり続けるのでしょうか。

    短期的には、観光需要の強さと北部開発への期待が続く限り、商業地や観光地周辺では上昇圧力が残りやすいです。
    特に本部町、名護市、北谷町、宮古島市、石垣市のように、観光や宿泊需要と土地の希少性が重なる地域は、引き続き注目されます。

    中期的には、住宅地の上昇ペースは地域差が大きくなりそうです。
    那覇市、南風原町、宜野湾市、北谷町のように生活利便性が高い地域は底堅い一方、価格が上がりすぎた地域では買える人が限られます。

    長期的には、地価上昇を支える要因と、抑える要因が同時にあります。
    支える要因は、観光基盤、土地の有限性、駅近・海沿い・中心地の希少性、世帯数の増加です。抑える要因は、建築費高騰、住宅ローン負担、所得との開き、災害リスク、観光需要の変動です。

    つまり、沖縄全体が一律に上がるというより、「使い道が明確な土地」と「価格だけが上がった土地」の差が広がる可能性があります。

    沖縄県民が知っておきたいポイント

    最後に、県民や土地所有者は何を見ておくべきでしょうか。

    1つ目は、路線価が上がっても、すぐに現金が増えるわけではないことです。
    自宅や先祖代々の土地を売らない場合、路線価上昇は資産価値の上昇である一方、相続税評価への不安にもつながります。

    2つ目は、土地の評価と売れる価格は別物だということです。
    路線価は税務評価、公示地価は標準的な価格、実際の売買価格は個別の土地条件で変わります。
    道路への接し方、形、面積、用途地域、造成費、建物の有無で結果は変わります。

    3つ目は、観光地だから必ず有利とは限らないことです。
    宿泊施設に向く土地、住宅に向く土地、店舗に向く土地、静かな生活環境を守るべき土地は違います。
    観光需要が強いほど、交通、騒音、管理、規制の確認も必要です。

    4つ目は、相続前に資料をそろえておくことです。
    固定資産税課税明細書、登記事項証明書、公図、測量図、路線価図、評価倍率表を確認しておくと、家族で話し合いやすくなります。

    沖縄の地価上昇は、明るいニュースだけではありません。
    家を買う人には負担増、土地を持つ人には相続や活用の課題、賃貸オーナーには建築費と修繕費の重さとして返ってきます。

    大切なのは、「上がったかどうか」だけでなく、自分の土地や住まいが、どの需要に支えられているのかを分けて見ることです。
    観光なのか、住宅なのか、交通利便性なのか、将来の開発期待なのか。
    そこを確認することが、これからの沖縄不動産を読む第一歩になります。

     

    ※出典
    国税庁「令和8年分 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」
    国税庁「令和8年分 沖縄県 財産評価基準書」
    沖縄タイムス「沖縄路線価、12年連続上昇 伸び率6.6%で全国2位 最高は那覇・国際通り166万円」(2026年7月1日)
    琉球放送 / TBS NEWS DIG「沖縄は全国2位 路線価伸び率12年連続で上昇 最高値は25年連続国際通り」
    国土交通省「令和8年地価公示」
    公益社団法人沖縄県不動産鑑定士協会「令和8年地価公示動向・沖縄県」
    沖縄県「推計人口」(2026年6月1日現在)
    沖縄県「令和7年度 沖縄県入域観光客統計概況(速報)」
    沖縄県「住宅着工統計」
    国土交通省「建設工事費デフレーター」
    国土交通省「土地取引の件数・面積」
    那覇市「市街地再開発事業」
    株式会社刀・株式会社ジャパンエンターテイメント「JUNGLIA OKINAWA 開業発表資料」
    内閣府沖縄総合事務局・国土交通省「沖縄西海岸道路・浦添北道路II期線関連資料」