タグ: 不動産オーナー

  • 沖縄の賃料はどこまで上がる?2025年調査から読む賃貸経営の状況と展望

    沖縄の賃料はどこまで上がる?2025年調査から読む賃貸経営の状況と展望

    賃料上昇を、そのまま収益改善と読まないために

    沖縄県では賃料が上がっているという話を耳にする機会が増えました。

    2025年の賃料動向調査でも、多くの間取りで前年を上回る賃料水準と、高い稼働率が示されています。

    ただし、県全体の平均賃料が上がったことだけで、個別の部屋も値上げできるとは限りません。

    間取り、地域、築年数、駐車場、競合物件、入居希望者の動きによって、募集条件の受け止められ方は変わります。

    この記事では、おきぎん経済研究所の賃料動向調査の要点を整理したうえで、賃貸オーナーが賃料・空室・維持費をどうつなげて確認するかを考えます。


    稼働率98.3%でも、間取りごとに需給は違う

    おきぎん経済研究所の「おきぎん賃料動向ネットワーク調査(2025年)」は、県内の賃貸管理会社へのヒアリングと不動産情報サイトのデータをもとに、沖縄県内の賃料水準と稼働状況をまとめたものです。

    賃料データの抽出日は2025-10-31で、管理会社へのヒアリングは2026-05-16から2026-07-21に実施されています。

    この調査の賃料は、共益費と駐車場代を除いた水準です。募集時の総支払額や、オーナーの実際の手残りを直接示す数字ではありません。

    主な結果は次のとおりです。

    項目 調査で示された状況 オーナーが読むときの留意点
    稼働率 全地域で95%以上、全地域平均98.3% 管理会社へのヒアリングによる現場感覚であり、物件戸数を集計した空室率ではありません。
    新設貸家 2025年度は5,536戸、前年度比3.7%増 新しい供給が増えても、間取り・地域・入居者層が異なれば自物件の競合とは限りません。
    賃料 中古2K〜2LDKを除き、タイプ別平均賃料は前年を上回る 平均値には物件構成やサンプル数の違いも影響します。個別物件へのそのままの当てはめはできません。
    需給 ファミリー向けは不足傾向、単身向けは地域によって充足・過剰傾向 同じ市内でも、駅・道路・駐車場・設備などで募集反応は分かれます。

    タイプ別の県内平均賃料を見ると、新築の上昇幅が目立ちます。

    間取り区分 新築の2025年平均賃料 前年比 中古の2025年平均賃料 前年比
    1R〜1K 60,700円 6.9%増 49,600円 3.3%増
    1DK〜1LDK 74,800円 9.4%増 60,900円 2.5%増
    2K〜2LDK 99,900円 8.4%増 73,100円 横ばい
    3K〜3LDK 117,500円 9.0%増 91,200円 5.9%増

    保有物件の地域を検討するときは、ここに示した県平均だけで済ませず、参考資料に挙げた調査報告書の原文で「主なエリアの動向」と間取り別の地域データを確認することをおすすめします。

    同報告書には、地域区分ごとの新築・中古別の賃料水準と前年からの増減率が掲載されています。

    ただし、「沖縄市及び近隣町村」や「豊見城市及び東南部」のように複数の市町村を含む調査独自の区分もあります。自物件の所在地、競合物件、入居者の動きを照らし合わせて読む必要があります。

    新築では建築費の上昇、中古では電気料金などの維持費、金利、退去後の原状回復費の上昇が、賃料水準を押し上げる背景として調査で挙げられています。

    一方で、これは各タイプの平均的な水準です。築年数や面積、設備が違う部屋同士を比べた数字でもあるため、個別の賃料改定を決める答えではありません。

    供給が増えても、広めの間取りは同じように増えない

    2025年度の新設貸家は3年連続の増加となりました。

    那覇市、浦添市、うるま市、豊見城市、糸満市、宮古島市などで増加がみられます。

    しかし、貸家の着工増加だけから「競合が増えるので家賃は下がる」と結論づけるのは早計です。

    調査では、2K〜2LDKは不足・やや不足とする回答が多く、3K〜3LDKも不足傾向が続くとされています。広めの間取りは平均入居期間が長く、市場に出る戸数が限られやすいことが背景です。

    反対に、1R〜1Kは地域によるばらつきが大きく、那覇地区では充足または過剰傾向の地域もあるとされています。

    同じ「賃貸需要が強い沖縄県」でも、単身向けとファミリー向けを同じ需給として扱わないことが大切です。

    オーナーが確認すべきなのは、県内全体の新設戸数ではなく、自分の部屋と近い間取り・築年数・設備・駐車場条件の募集が、どの程度あるかです。

    新築の賃料上昇と、中古物件の募集力は別に考える

    新築賃料が上昇している局面では、中古物件でも「新築が高くなったから自分も上げられる」と考えたくなります。

    しかし、入居希望者は新築と中古を同じ基準で比べるわけではありません。

    新築には、築浅の設備、室内状態、断熱性、共用部の印象などが含まれます。中古物件が新築の賃料帯に近づく場合は、その差をどう説明できるかが重要です。

    例えば、駐車場の台数と料金、通勤・通学へのアクセス、室内の清掃状態、エアコンやインターネット環境、収納、水回りの状態は、家賃だけでは表せない比較材料になります。

    中古2K〜2LDKの県平均賃料が前年並みだったことも、見逃せない点です。

    ファミリー向けの不足感があっても、全ての中古物件で賃料上昇が受け入れられるわけではありません。建物ごとの状態や競合との差を確認して、賃料と条件をセットで考える必要があります。

    平均賃料ではなく、自分の部屋の競合と反応を見る

    賃料を見直すときは、平均賃料を目標額にするより、次の5つを一緒に確認する方が実務的です。

    確認する軸 管理会社と確認したいこと
    入居者像 単身、カップル、子育て世帯、法人契約など、現在の条件で誰が候補になるか
    競合 間取り、築年数、面積、階数、駐車場、設備が近い募集物件の条件と掲載期間
    総負担 家賃だけでなく、共益費、駐車場代、初期費用を含めた入居者側の負担感
    物件の状態 清掃、修繕の要否、写真と内見時の印象差、共用部と建物周りの状態
    募集反応 問い合わせ内容、内見につながったか、見送り理由、数値がなければ管理会社の代表的な反応

    管理会社に「いくらなら必ず決まるか」と確定的な予測を求める必要はありません。

    現行条件と見直し案で、どの入居者層を想定するのか、競合との差は何か、反応が弱い場合にいつ何を見直すのかを共有することが目的です。

    閲覧数や問い合わせ件数を常に取得できない場合もあります。その場合は、掲載媒体、代表写真、よく受ける質問、内見後の感想、近い競合との違いを聞き、次の振り返り日を決めます。

    維持費の上昇は、家賃に転嫁できるとは限らない

    電気料金、清掃費、原状回復費、修繕費、借入金利が上がれば、オーナーの手残りは圧迫されます。

    ただし、費用が上がったことと、入居者がその分の賃料を受け入れることは別の問題です。

    賃料を上げる案では、年間の増収だけでなく、追加の空室日数、広告料、フリーレント、設備更新費、退去後の募集準備費まで同じ期間で比較します。

    賃料を据え置く案でも、空室を短くできるなら、年間の家賃収入や資金繰りが安定する場合があります。

    大切なのは、値上げか据え置きかを一律に決めることではありません。

    保有期間、借入返済、近い時期の大規模修繕や売却の予定も踏まえ、許容できる空室期間と手残りを先に決めてから募集条件を比べます。

    今後1〜2年は、間取り別・地域別の差を前提に見る

    調査に協力した管理会社の見通しでは、今後1〜2年で不足傾向は縮小する見込みとされる一方、3K〜3LDKの広めの物件と離島地域では不足傾向が続く見通しです。

    単身向けでは、地域によって需給の適正化や供給過多が続く可能性も示されています。

    これは将来の家賃を予測するものではありません。調査対象の物件構成やサンプル数は年によって異なり、地域別の増減にはその影響も含まれます。

    ValueLabとしては、今後も「県平均が上がっているか」だけでなく、間取りと地域を分けて、稼働率を保てる条件かを確かめることが重要だと考えます。

    建築費や維持管理費、金利が上がる局面ほど、希望する賃料を先に置くのではなく、競合との比較と募集開始後の反応を見ながら条件を検証する姿勢が必要です。

    特に新築供給が増える地域では、家賃差だけでなく、駐車場、設備、生活利便性、入居後の管理品質まで含めた競争になりやすくなります。

    次の管理会社との打ち合わせで確認したいこと

    最後に、次の打ち合わせでは以下を確認します。

    • 自分の部屋と近い競合物件は、どの賃料・総負担・条件で募集されているか
    • 間取りごとの需給は、自物件がある地域でどうなっているか
    • 駐車場、設備、室内状態、共用部に、家賃以外で選ばれにくくなる要因はないか
    • 現行賃料、見直し案、空室日数、広告料や追加費用を比べたとき、手残りはどう変わるか
    • 問い合わせや内見の反応が弱い場合、いつ、何を、どの順番で見直すか

    県全体の賃料上昇は、保有物件を見直すための出発点にはなります。

    しかし、最終的な募集判断は、平均賃料ではなく、物件ごとの競合と入居者の反応で決まります。

    数字を一つの結論に使うのではなく、賃料、空室、維持費、管理負担をつなげて比べることで、無理のない賃貸経営を考えやすくなります。

    参考資料:おきぎん経済研究所「おきぎん賃料動向ネットワーク調査(2025年)」(2026-08-21公表)

  • 「現況有姿で貸す」ときに契約書へ残したいこと

    「現況有姿で貸す」ときに契約書へ残したいこと

    管理会社から「現況有姿で案内してよいか」と聞かれたら

    管理会社から、築30年以上のアパートについて連絡がありました。

    「洋室のドアは少し重く、床には細かな傷があります。窓のクレセント錠にも緩みがありますが、契約書へ『現況有姿』と書き、入居者に了承してもらえば、このまま募集してよいでしょうか」

    あなたなら、どう答えますか。

    すべてを新品同様に直せば修繕費が膨らみます。
    一方、生活や安全に関わる不具合まで「古い物件だから」と残せば、入居後の修繕要求や費用負担をめぐるトラブルにつながります。

    必要なのは、現況有姿で貸せるかを一言で決めることではありません。
    共有する状態、先に修繕する箇所、費用負担を順番に分けることです。

    この場面で、オーナーが最初に陥りやすい判断の飛躍は何でしょうか。

    「現況有姿」と書けば直さなくてよい、が最初の落とし穴

    最初の落とし穴は、現況有姿という言葉を、貸主の責任をまとめて外す免責条項のように扱うことです。

    現況有姿は、契約時点の状態を示して認識をそろえるための言葉です。
    それだけで、貸主の修繕義務や費用負担まで一括して決まるわけではありません。

    実務では、次の三つが混同されやすくなります。

    • 入居者が、傷や古さなどの現状を確認していること
    • その状態のまま、契約で予定した住まい方ができること
    • 将来の修繕義務や修繕費を、誰が負担するかということ

    壁紙の色あせを写真で示すことと、施錠できない窓を修繕せずに引き渡すことは同じではありません。
    反対に、使用に支障のない小傷まで一律に交換すれば、募集前の費用が増えます。

    見落としと過剰対応の両方を避けるには、「了承してもらう状態」と「貸主が修繕を検討する状態」を何によって分ければよいのでしょうか。

    状態共有・修繕義務・費用負担を4つの軸で分ける

    分けるのは、「状態の共有」「修繕の要否」「費用負担」の三つです。

    状態の共有は、契約時点の古さや不具合を、現況写真、設備表、物件状況確認書、説明記録で特定することです。

    修繕の要否は、使用・収益に必要な機能、安全性、悪化の可能性から考えます。
    民法第606条は、賃借人の責任で修繕が必要になった場合を除き、使用・収益に必要な修繕を賃貸人の義務としています。

    費用負担は、原因、契約内容、故意・過失の有無などから整理します。
    原因が分からない段階で「現況有姿だから借主負担」と決めると、緊急対応と費用の話が混ざります。

    必要な修繕を貸主が相当期間内に行わない場合や急迫の事情がある場合には、民法第607条の2により借主が修繕できる場面があります。
    借主の責任によらず一部が使えなくなれば、第611条により使用できない割合に応じて賃料が減額されます。借主には、修繕が必要な状態を貸主へ知らせる通知義務もあります(第615条)。

    貸主が事業者、借主が消費者に当たる居住用賃貸借では、消費者契約法第8条・第10条も確認対象です。
    貸主側の損害賠償責任を全面的に免除する条項や、借主の利益を一方的に害する条項は無効となる場合があります。特約の効力は個別事情で変わるため、包括的な文言だけで有効・無効を断定しません。

    判断の軸は、使用・安全・原因・記録の四つです。次の順に見ます。

    判断軸 確認すること 判断への影響
    使用 予定した生活や設備利用に支障があるか 支障が大きいほど修繕を優先する
    安全 施錠、漏電、漏水、転倒、落下などの危険がないか 危険があれば調査・是正を先にする
    原因 経年劣化、借主原因、外部要因、原因不明のどれか 費用負担の材料にするが、緊急対応は遅らせない
    記録 箇所、程度、写真、設備表、説明内容が一致するか 特定できない状態を包括的に了承済みと扱わない

    沖縄では、台風後の雨水侵入、湿気による建具の膨張、塩害による金属部品の腐食が、見た目の古さを漏水や施錠不良へ変えることがあります。台風後や長雨後に再点検し、撮影日を残すことが、契約前の状態と入居後の進行を分ける材料になります。

    また、修繕で空室期間の短縮、賃料維持、将来の大きな修繕の回避が見込めるなら、募集前に対応する経営上の意味もあります。

    この四つの軸で比べると、室内ドアと施錠できない窓はどう分かれるでしょうか。

    室内ドアと施錠できない窓で結論が変わる

    室内ドアは現況共有の余地がある一方、施錠できず雨染みもある窓は、調査・修繕を先にする判断へ寄ります。

    室内ドアの動きが少し重い場合

    洋室ドアの動きが少し重くても、最後まで開閉でき、通行や安全に大きな支障がないとします。

    状態が安定し、内見時に動作確認でき、写真と物件状況確認書で対象を特定できるなら、契約時点の状態として共有する選択肢があります。
    判断理由は「築古だから」ではなく、使用への影響と危険が小さく、状態を記録できるからです。悪化時の連絡先と対応方針も決めておきます。

    窓が施錠できず、雨染みもある場合

    窓のクレセント錠がかからず、台風後に窓枠近くへ雨染みが出ている場合は、防犯と雨水侵入に関わります。

    金具の緩みだけか、塩害による腐食やサッシ周りの防水不良まであるのかを調べ、必要な応急対応と修繕範囲を先に整理します。
    現況写真を見せても、調査や修繕の必要性まで消えるわけではありません。

    二つの違いを契約書へ残す前に、どの資料をどの順番でそろえるべきでしょうか。

    契約書の前に、現地・写真・設備表をそろえる

    最初にそろえるのは契約文ではなく、現地で確認した事実です。次の募集前に、オーナーと管理会社で順番に確認します。

    1. 設備を動かす:開閉、施錠、給湯、漏水などの基本動作を見る。
    2. 状態を分類する:見た目の古さ、使用に支障がある不具合、緊急性がある不具合を分ける。
    3. 記録を特定する:部屋名、部位、症状、撮影日、写真番号、確認者を残す。
    4. 資料を一致させる:募集図面、設備表、物件状況確認書、契約書・特約、説明内容を照合する。
    5. 沖縄要因を再点検する:台風後や長雨後に、雨染み、腐食、建具の変化がないか見る。
    6. 借主と認識を共有する:契約前に現物と資料を示し、確認した事実を残す。
    7. 入居後対応を決める:悪化時の連絡先、点検時期、修繕判断者を明確にする。

    契約書には「築年数相応の不具合」と広く書くより、対象箇所と状態を特定し、別紙や写真番号と結び付けます。
    たとえば、洋室入口ドアについて「開閉時に抵抗があるが通常の出入りは可能」「写真A-03で確認」「悪化時は管理会社へ連絡」と記録する考え方です。

    確認結果を、現況共有・先行修繕・専門確認へどう振り分ければよいでしょうか。

    現況共有・先行修繕・専門確認へ振り分ける

    振り分けは、使用・安全を入口にし、原因と記録で枝分かれさせます。

    1. 使用または安全に支障があるか
      • はい:先に調査・応急対応・修繕を検討する
      • いいえ:次へ進む
    2. 原因不明、進行中、再発中か
      • はい:原因調査を行い、必要に応じて専門家へ確認する
      • いいえ:次へ進む
    3. 対象箇所と程度を写真・設備表で特定できるか
      • はい:現況共有の対象として整理する
      • いいえ:記録を整えるまで包括的な了承で進めない
    4. 修繕義務の免除や広い費用転嫁を含むか
      • はい:契約内容を宅地建物取引士・弁護士等へ確認する
      • いいえ:管理会社と説明・記録・入居後対応をそろえる

    到達点は三つです。
    使用・安全への支障が小さく状態を特定できれば現況共有、生活・安全への影響があれば先行修繕、包括的免責や原因不明、広い費用転嫁があれば専門確認へ進みます。

    今日行うことは、現在の賃貸借契約書を開き、「現況有姿」という一文だけで対象箇所や状態が分からなくなっていないか確認することです。
    次の募集前には、管理会社と室内を見て、古さや不具合を三つの到達点へ分類します。

    現況有姿は免責の結論ではなく、契約時点の状態を双方で確かめる入口です。
    状態を記録すること、使用・安全に必要な修繕を判断すること、原因と契約に基づいて費用負担を考えることを分ければ、過剰修繕と対応不足の両方を避けやすくなります。

    包括的な免責や修繕費の広い転嫁を含む特約は、定型文に頼らず、対象資料をそろえたうえで専門家へ確認してください。

    参考資料

    e-Gov法令検索「民法」、国土交通省「賃貸住宅標準契約書」、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、e-Gov法令検索「消費者契約法」

  • 損しない賃貸経営|「築年数相応の状態」をどう説明するか

    損しない賃貸経営|「築年数相応の状態」をどう説明するか

    築年数相応の古さは入居前の説明で伝わります

    「床鳴りや建具のズレは、どこまで直すべきなのか」

    築古物件をすでに所有しているオーナーにとって、築年数相応の状態をどこまで説明し、どこから修繕対応すべきかは悩みやすいテーマです。

    壁紙の日焼け、古い設備の見た目、建具の動きにくさなどは、築古物件では珍しくありません。
    一方で、生活に支障がある不具合や安全に関わる問題は、別に考える必要があります。

    入居前に状態を分かりやすく共有できれば、入居後に「聞いていなかった」「直してもらえると思っていた」という認識違いを減らしやすくなります。

    この記事では、築年数相応の状態をどう説明し、契約書や設備表とどうつなげるかを確認します。

    この記事を読むことで、築年数相応の古さと、貸主対応を検討すべき不具合を分けて考えやすくなります。

    築年数相応の状態は入居前に明確にします

    築年数相応の状態は、入居前に写真、設備表、説明文などで明確にしておくことが大切です。

    古さを隠すのではなく、現在の状態を共有したうえで契約することが、入居者との認識違いを防ぐ第一歩になります。

    特に築古・低家賃物件では、賃料水準と物件状態のバランスを入居前に理解してもらうことが重要です。

    なぜ古さと不具合を分ける必要があるのでしょうか?

    理由は、築年数相応の古さと、修繕が必要な不具合が混同されやすいためです。

    たとえば、古い建具が少し重いことと、玄関ドアが閉まらないことは同じではありません。
    床が多少きしむことと、床が大きく沈む状態も同じではありません。

    前者は、物件の状態として説明できる場合があります。
    一方で、後者は防犯や安全、居住性に関わるため、貸主対応が必要になる可能性があります。

    この区別を契約前に整理していないと、入居後に「聞いていなかった」「どこまで直してもらえるのか」という話になりやすくなります。

    床鳴りや建具のズレはどう伝えるべきでしょうか?

    たとえば、築古の建物で、室内建具に少し引っかかりがあるケースを考えます。

    使用に大きな支障がなく、安全性にも問題がない場合は、内見時に現地で説明し、申込前の判断材料として共有します。
    そのうえで、契約前には設備表やチェックシートに記載し、入居時には写真でも残しておくことで、入居後の認識違いを減らしやすくなります。

    一方で、床に大きな段差がある、コンクリートのひび割れや漏水跡がある、建具が閉まらず施錠できないといった状態は注意が必要です。築年数相応という言葉だけで済ませず、募集前または内見前の段階で修繕の要否を確認することが大切です。

    大切なのは、見た目の古さと、生活に支障がある不具合を分けて説明することです。
    見た目の古さは内見時と契約前に共有し、生活に支障がある可能性のある不具合は、募集開始前から管理会社や施工会社と確認しておくと安心です。

    状態の共有が安定運用につながります

    築古物件では、古さそのものをなくすよりも、状態を正しく共有することが重要です。
    共有のタイミングは、募集前の状態確認、内見時の説明、契約前の書面確認、入居時写真の保存という流れで整理しておくと、後から確認しやすくなります。

    特に重要なことは、
    「賃貸人は築年数を踏まえ新築同様の性能・品質まで回復させる修繕義務を負わない」という趣旨を契約書に明記にしておくことです。

    入居者の生活に支障が出る部分は先に対応し、築年数相応として説明できる部分は、入居前・契約時に丁寧に伝えておくことです。

    契約書、設備表、入居時写真、管理会社の説明内容がそろっていれば、貸主と入居者の認識違いを減らし、入居後の修繕対応も判断しやすくなります。

    築古物件を安定して貸し続けるためにも、募集を始める前に一度、物件の状態を点検し、説明すべき内容を整理しておくことをおすすめします。

    ※参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

  • 損しない賃貸経営|築古・低家賃物件ほど「契約書の見直し」が収支を守る理由

    損しない賃貸経営|築古・低家賃物件ほど「契約書の見直し」が収支を守る理由

    修繕費は低家賃物件の利益を一気に圧迫します

    「エアコン1台を交換しただけで、数か月分の利益が消えてしまった」

    築古アパートや築古戸建て、低家賃物件をすでに所有しているオーナーにとって、入居後の修繕対応は収支に直結する重要な課題です。

    「この修繕は本当に貸主が負担すべきなのか」「現在使っている賃貸借契約書では、どのように整理されているのか」と判断に迷う場面も少なくありません。

    設備の扱いや修繕の範囲を契約書で事前に整理しておくことは、急な出費への備えだけでなく、入居者との認識違いを防ぐことにもつながります。

    この記事では、なぜ築古・低家賃物件ほど契約書の見直しが重要になるのかを解説します。

    この記事を読むことで、低家賃物件で修繕費が収支に与える影響と、契約書で事前に確認すべき理由が分かります。

    築古・低家賃物件では契約書の確認が収支を守ります

    築古・低家賃物件では、修繕対応のルールを契約書で明確にしておくことが重要です。

    これは、貸主が一方的に責任を免れるためのものではありません。
    「物件の状態」「設備の扱い」「修繕の範囲」を事前に整理し、入居者との認識違いによるトラブルを防ぐためです。

    契約書は、トラブルが起きた後に確認するだけの書類ではありません。
    入居後のスムーズな運用のために、対応方針をあらかじめ共有する実務資料でもあります。

    管理会社に対応を任せている場合でも、オーナー自身が一度内容を確認しておくことが大切です。

    なぜ低家賃物件ほど修繕費の影響が大きいのか?

    理由はシンプルです。家賃設定が低いほど、1回あたりの修繕費が年間収支に与える影響が大きくなるためです。

    たとえば月額4万円の部屋で、8万円のエアコン交換が発生したとします。
    単純計算で、家賃2か月分に相当する金額が修繕費として出ていくことになります。

    さらに、原状回復費、入居者募集費、管理手数料、固定資産税などが重なると、年間の手残りは大きく減少します。

    もちろん、居住に必要な修繕や安全に関わる不具合については、貸主対応が必要になる可能性があります。
    課題となりやすいのは、「どこまでが貸主が維持すべき設備としての修繕で、どこからが入居者の日常的な維持管理の範囲なのか」が曖昧なまま運用されている点です。

    エアコンの「設備」と「サービス品」の認識違い

    よくあるトラブルの原因として、エアコンの扱いがあります。

    入居者から「エアコンが故障したので交換してほしい」と連絡があった場合、そのエアコンが「契約上の設備」なのか、それとも「前入居者が残していった残置物やサービス品」なのかによって、対応の考え方は変わります。

    しかし、契約書や設備表にその扱いが明記されていない場合、入居者は「最初から設置されていたのだから、貸主が修理・交換してくれるもの」と考えやすくなります。

    オーナー側が「築古で賃料も安いため、すべての設備交換に対応するのは難しい」と考えていても、事前の説明がなければ、お互いの認識にズレが生じてしまいます。

    このようなすれ違いは、どちらか一方に問題があるというよりも、契約時の整理や合意形成が不足していることから生じる場合が多いです。

    契約更新や新規募集のタイミングで見直したいこと

    築古・低家賃物件の賃貸運用では、修繕費を完全にゼロにすることを目指すのではなく、入居後の修繕負担をあらかじめ明確にしておくことが安定運用の助けになります。

    現在使っている賃貸借契約書について、設備の具体的な範囲、残置物やサービス品の取り扱い、小修繕における負担区分の考え方、緊急時の連絡先や対応フローが整理されているかを一度確認してみてはいかがでしょうか。

    ※参考:民法第606条、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」