コラム

りゅうぎん総合研究所:沖縄県内景気動向(2026年1月)を読み解く

目次

貸家急増・分譲大幅減、ただし単月の振れに注意 ── 2026年1月の沖縄不動産市場

りゅうぎん総合研究所が公表した「沖縄県内景気動向(2026年1月)」をもとに、不動産投資家・オーナーの視点から読み解いた記事です。
公的統計の数字を賃料・売買判断・資金面の3軸で整理しています。


まず結論から

  1. 沖縄経済は29カ月連続で緩やかな拡大を続けている。
    観光が50カ月連続増加と牽引する一方、建設は資材高止まり・人手不足で回復に一服感が出ている。
  2. 12月の貸家着工が+88.5%、分譲着工が-48.3%と単月で大きく振れた。
    ただし着工数は月ごとのばらつきが大きい指標であり、3カ月合計(10〜12月)では全体+14.5%と一服感にとどまっている。単月の数字だけで供給トレンドを断定せず、複数月の推移で確認することが重要だ。
  3. 企業倒産件数が前年同月比+3件(9件)、負債総額は+212.2%と急増。
    新規求人も8カ月連続減で、テナント企業の経営体力に注意が必要な局面。

今月の沖縄で何が起きているか

2026年1月の入域観光客数は835,800人(前年同月比+6.7%)と50カ月連続で前年を上回った。
Jリーグサッカーキャンプや年始の増便効果が重なり、国内客(+6.1%)・外国客(+8.4%)ともに好調だ。
ホテル稼働率は60.5%(+0.9ポイント)と22カ月連続で上昇し、売上高も+2.2%と20カ月連続増が続いている。
ただし宿泊収入は+0.2%と増加幅が極めて小さく、量の増加が収益に十分には反映されていない状況は続いている。

住宅の着工動向では、今月の最新値として12月分が報告された。新設住宅着工戸数(12月)は988戸で+15.2%(5カ月連続増)。
内訳を見ると貸家607戸(+88.5%)・給与住宅13戸(+550.0%)が大きく増え、持家202戸(-5.2%)・分譲166戸(-48.3%)が落ち込む構成だった。
ただし、新設住宅着工戸数は月ごとのばらつきが大きい指標だ。

2025年の月次データを見ると、3月に+81.0%・5月に-49.5%・9月に+30.2%と毎月の振れ幅が極めて大きい。
単月の+88.5%や-48.3%は「その月に許可・着工が集中または分散した」効果を多分に含む可能性がある。
実態を読むには3カ月合計(10〜12月)の+14.5%という数字が参考になる。単月データは方向感の確認に使い、断定的な解釈は避けることが適切だ。

建設資材面では、セメント(-5.8%)・生コン(-8.3%)ともに7カ月連続で前年を下回り、鋼材(-7.8%)・木材(-14.8%)も弱い。
一方、民間建設会社の受注額は+111.5%(3カ月連続増)と急拡大しており、先行きの着工増加を示唆している。


今月のオーナー向け3点チェック

① 賃料は上がるか、空室は増えるか

判定:中立(エリア・物件タイプで分かれる)

根拠:新設住宅着工・貸家+88.5%(12月単月、前年同月比)、着工戸数3カ月合計(10〜12月)+14.5%、入域観光客数835,800人(+6.7%、50カ月連続増)

12月単月の貸家+88.5%は一見大きいが、着工数の月次ばらつきを踏まえると、この数字だけで「賃貸供給が急加速している」と断言するのは早計だ。
3カ月合計(10〜12月)でも全体+14.5%と着工増加のトレンド自体は続いているため、緩やかな供給増への備えは引き続き有効と言える。
入域観光客の持続的な増加とスーパー売上の堅調(既存店+4.9%)は、生活密着エリアの賃料を下支えする要因として読める。

今月すべきこと
単月データに過剰反応せず、直近3〜6カ月の着工トレンドで自物件周辺の供給動向を継続確認することが有効になりやすい。


② 売るべきか、持つべきか

判定:中立(持家・分譲は供給絞り込みで希少性維持)

根拠:新設住宅着工・分譲-48.3%(12月単月、前年同月比)、着工戸数3カ月合計(10〜12月)+14.5%、建設受注額+111.5%(前年同月比、3カ月連続増)

12月の分譲-48.3%は月次ばらつきの範囲内である可能性がある。
3カ月合計では全体が+14.5%と増加傾向にあるため、分譲供給が継続的に絞られているとは現時点では断言しにくい。
ただし建設受注額が+111.5%(3カ月連続)と拡大しており、公共工事(+662.3%)・民間工事(+26.2%)ともに受注増が続いているため、先行きの着工増加余地は残っている。
中期的な売却タイミングを検討する際は、受注→着工のラグ(通常3〜6カ月)を意識した判断が有効と言える。

今月すべきこと
分譲着工の単月データで「供給がなくなった」と解釈するより、建設受注の拡大が着工にいつ反映されるかを継続的に追うことが有効になりやすい。


③ 資金面は今月大丈夫か

判定:要注意

根拠:企業倒産件数9件(前年同月比+3件)、負債総額10億4,900万円(+212.2%)、新規求人数(12月)-11.3%(8カ月連続減)

倒産は製造業2件・サービス業2件・建設業1件ほかと業種が広がっており、特定業種に限らない傾向が見える。
雇用は有効求人倍率1.08倍・完全失業率3.0%(前月から-0.7ポイント改善)と急悪化ではないが、新規求人が8カ月連続で減少していることはテナント企業の採用余力の低下を示唆する。
消費者物価指数は+1.5%(53カ月連続上昇)と物価圧力が続いており、テナントの実質コスト負担は上昇傾向にある。

今月すべきこと
テナント系物件を保有している場合は、製造・サービス業テナントの契約更新状況と入金状況を早めに確認し、万が一の空室を想定したキャッシュフロー余力を試算しておくことが有効になりやすい。


今月で変わったこと

  1. 12月の貸家着工が+88.5%・分譲着工が-48.3%と単月で大きく振れた。
    ただし着工数は月ごとのばらつきが極めて大きく、3カ月合計(10〜12月)では+14.5%とより穏やかな数字に収まっている。単月の極端な値は傾向の確認に留め、断定的な解釈は複数月での確認が必要だ。
  2. 建設受注が+111.5%と3カ月連続で急拡大しており、先行きの着工増加に備えた判断軸の準備が有効になりつつある。
  3. 企業倒産件数・負債総額がともに急増し、テナント・雇用環境における下押しリスクが顕在化しつつある。

※出典:りゅうぎん総合研究所「沖縄県内景気動向(2026年1月)

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