コラム

沖縄の景況は「拡大」、でも不動産業だけが突出している理由とは?──2026年1-3月期 海邦総研BSI

目次

株式会社海邦総研が公表した「県内景気動向調査(2026年1-3月実績、4-6月見通し)」をもとに、不動産投資家・オーナーの視点から読み解いた記事です。

2026年1-3月期の沖縄経済、何が起きているか?

2026年1-3月期の県内企業景況判断BSI(Business Survey Index)は7.7で「上昇」超となりました。

BSIとは、「上昇した」と答えた企業の割合から「下降した」と答えた企業の割合を引いた数値です。
プラスなら景況が良い企業が多く、マイナスなら悪い企業が多いことを示します。

海邦総研の調査(有効回答503社)によれば、「県内景気は緩やかに拡大している」との判断が示されています。
観光需要の旺盛さと県内需要の好調さが、多くの産業に波及しました。

ただし、業種別に見ると動きはバラバラです。
全業種最高の不動産業等(BSI 22.2)から、製造業(BSI -3.6)まで大きな開きがあります。
「全体で拡大」という言葉の裏にある業種ごとの温度差を確認することが、今の判断軸になります。

この記事では、不動産投資の視点から3つの読み方を整理します。
不動産セクターの突出した強さ・建設コストが招く供給制約・4-6月期見通しの変化という3点を確認してください。

まず結論から。海邦総研BSI・3つの読み方

不動産業等BSIが22.2で全業種トップ
売上高・経常利益ともに「上昇」超で、観光需要と県内需要の拡大が収益物件の稼働を下支えしています。
分譲マンション価格は5,000万円台に達しており、県内で住まいとして購入を検討する一般的な世帯には手が届きにくい水準となっています。

建設業BSIは15.5で「上昇」
上昇ながら、建築コストの高止まりと資材供給の不安定化が重荷になっています。
分譲マンションの値上がりと対照的に、宮古島では単身者向けワンルームに空室が出始め、供給過多エリアの出現が確認されています。

仕入れ価格BSI 50.9(大きく「上昇」超)
全業種で原材料費・人件費の上昇が続いており、価格転嫁は進みつつあるものの利益確保は難しい状況です。
コスト増は12〜18カ月のラグを経て、新規供給抑制→賃料上昇というかたちで不動産市場に波及する傾向があります。

ではなぜ、こうした動きになっているのか?

① 不動産業等BSIが全業種トップ──何が売上を押し上げているのか

2026年1-3月期の不動産業等のBSIは22.2で、全業種の中で最も高い水準となりました。
「上昇」とした企業が27.8%に対し、「下降」とした企業はわずか5.6%です。
なぜこれほど強い数値が出ているのでしょうか。

以下の表で、不動産業等の主要指標を確認できます。

指標 1-3月実績 4-6月見通し
景況 BSI 22.2 7.4
売上高 25.9 14.8
経常利益 22.2 14.8
販売価格 31.5 22.2
仕入れ価格 35.2 37.0
県内需要 16.7 9.3
県外需要 5.5 9.3

好調の背景にあるのは、観光需要の旺盛さと県外投資家・法人からの需要です。
地元の一般購入者ではなく、外部からの旺盛な需要が売上を押し上げている構図です。
4-6月見通しでも7.4と「上昇」超を維持しており、短期的な需要の腰折れは見られません。

② 建設コスト高と分譲5,000万円台──供給は絞られるか

建設業のBSIは15.5で「上昇」超ながら、利益率は厳しい状況が続いています。
建設業の経常利益BSIは13.6と「上昇」超ですが、仕入れ価格BSIは55.3と突出しています。
ではなぜ、売上が取れているのに利益が圧迫されているのでしょうか。

以下の表で、建設業の業況を確認できます。

指標 1-3月実績 4-6月見通し
景況 BSI 15.5 2.0
売上高 21.3 7.8
経常利益 13.6 -2.9
仕入れ価格 55.3 56.4
従業員数(不足超) 65.0 54.4

4-6月見通しでは経常利益がマイナス(-2.9)に転じており、売上は確保できても利益が出ない構造が浮かび上がります。
5,000万円台は、沖縄の平均的な世帯収入では住宅ローンを組んで購入するのが難しい価格帯です。
それでも売れているのは、投資家や県外からの移住者が主な購入層になっているためで、地元の住宅需要には届いていません。

宮古島では工事需要の一巡とともに、単身者向けワンルームに空室が出始めました。
一方で、那覇・本島中部の供給は選別受注に移行しており、エリアによって供給量のばらつきが大きくなっています。

③ 4-6月期の見通しをどう読むか

4-6月期の全体BSI見通しは3.8と、引き続き「上昇」超を維持しています。
ただし、業種間でどれほどの差があるのでしょうか。

以下の表で、主要業種の見通しBSIを確認できます。

業種 4-6月見通し BSI
製造業 +14.2
医療・福祉 +12.5
卸売・小売業 +11.2
不動産業等 +7.4
その他サービス業 +4.7
建設業 +2.0
情報通信業 -6.7
飲食サービス業 -12.5
旅行・宿泊業 -14.8

観光関連(旅行・宿泊業 -14.8、飲食サービス業 -12.5)は比較的大きく「下降」超の見通しです。
背景には、アンケート期間中の中東情勢悪化(米国のイラン攻撃報道)への警戒感があり、外国人客の動向に不透明感が生じています。
一方で、不動産業等(+7.4)と卸売・小売業(+11.2)は引き続き「上昇」超を維持しています。

この景況拡大、不動産投資家は何を確認すべきか?

2026年1-3月期の沖縄は、全体として「緩やかな拡大」の中に業種間の明暗が共存しています。
不動産投資の視点から整理すると、以下の3点が判断軸になります。

不動産業等の高BSI(22.2)は、現在の収益物件の稼働・賃料水準を支える県内需要の強さを示しています。
建設コスト高と採算悪化は、新規供給を選別・抑制する方向に働いており、中長期的には賃料や価格の下支え要因になり得ます。
宮古島の空室発生と那覇の供給絞り込みは、エリア別の二極化が進んでいることを示しており、一律の判断は禁物です。

 

「全体が拡大しているから大丈夫」ではなく、「自分の物件があるエリアと用途のBSIはどうか」を問い直すことが重要です。
あなたの保有物件や検討中のエリアは、今の景況拡大の恩恵を受けているでしょうか?
それとも、コスト増と供給調整の影響を受ける側にあるでしょうか?

※出典:株式会社海邦総研「県内景気動向調査(2026年1-3月実績、4-6月見通し)」(2026年4月16日発表)

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