損しない賃貸経営

人気設備を付ければ家賃は上がる?設備投資を3つの目的に分けて考える

人気設備を付ければ家賃は上がる?設備投資を3つの目的に分けて考える

目次

「人気だから付ける」だけでは、投資の答えにならない

入居者は、候補物件を並べながら「駐車場は足りるか」「ネット環境はあるか」「防犯面はどうか」と、自分の暮らしに必要な設備を比べています。

賃貸ポータルサイトでも、エリアや家賃だけでなく、設備やこだわり条件で物件を絞り込めます。設備があっても募集情報へ正しく登録されていなければ、その条件で探す人の候補に入りにくくなる可能性があります。

だから設備は、住み心地だけでなく、検索結果に現れ、比較の土台に乗るためにも重要です。

家賃を据え置いて早く決まること、今の入居者が住み続けやすくなることにも、収益上の意味があります。

この記事では、設備投資を家賃アップ・空室短縮・退去防止の3つの目的に分けて考えます。
人気設備を検討候補にしながら、集合住宅の戸数や費用をどう収支へ置くかを整理します。

全国で問合せが多い設備は、候補を探す入口になる

アットホームの調査では、2025年に賃貸居住用物件を探した人から問合せが多かった設備は、駐車場が41.8%で1位でした。続いて、インターネット接続料無料、オートロックが上位に挙がっています。

同調査は、全国のアットホーム加盟店469店を対象にしたものです。沖縄の個別物件で同じ順位や効果が出ることを示すものではありません。

たとえば駐車場は、台数、車種、出入りのしやすさ、近隣月極駐車場の状況で価値が変わります。インターネット無料も、回線品質、入居者自身で使う回線との費用差、入居者層によって評価が異なります。

ランキングは「何を調べるか」の入口です。導入前には、同じ家賃帯・面積・築年数で競合する物件に、その設備があるかを確かめます。

既存物件でも検討しやすい設備アイディア

新築のように全てを入れ替えなくても、既存物件で募集力や住み心地を見直せる場合があります。
次の表は人気順位ではなく、物件条件に応じて検討できるアイディアです。

設備・改善案 主に狙う目的 導入前に確認すること
インターネット接続料無料 空室短縮・退去防止 戸数、回線品質、月額費用、競合との差
宅配ボックス 空室短縮・退去防止 設置場所、防犯性、戸数に対するボックス数、荷物の大きさ
モニター付きインターホン 空室短縮・退去防止 既存配線、各戸機器の交換範囲、故障時の対応
防犯カメラ 空室短縮・管理の手間の軽減 撮影範囲、プライバシー、録画の保存期間、故障時の対応
スマートロック 空室短縮・管理の手間の軽減 電池切れ・故障時の対応、非常解錠、管理会社の運用
共用部のLED・人感センサー 空室短縮・退去防止 照度、防犯上の死角、交換・保守費、既存器具との適合
24時間ゴミ出し対応 空室短縮・退去防止 収集日、保管場所、臭気・害虫対策、管理・清掃の手間
室内物干し・収納改善 空室短縮・退去防止 天井・壁の下地、間取り、想定する入居者の生活動線
駐車区画の見直し 空室短縮・家賃アップ 台数、区画寸法、出入り、近隣相場、追加工事の可否

設備を選ぶときは、入居者像を先に決めます。車を複数台持つ世帯を想定するなら、駐車場が候補になります。

在宅勤務や単身者を想定するなら通信環境や宅配ボックス、夜間の出入りや防犯を重視する層ならインターホンや共用部照明が候補になります。

ただし、設備の追加だけで選ばれるとは限りません。写真、初期費用、室内状態、入居可能日、仲介会社からの紹介のされ方も、反響に影響します。

目的1:家賃アップを狙うなら、競合との家賃差を確認する

家賃アップが目的なら、設備を付けた後にどれだけ上げたいかではなく、近い条件の競合物件と比べて家賃差を説明できるかを確認します。

同じ設備が周辺物件で標準になっているなら、設備を付けても家賃差は作れないかもしれません。その場合は、家賃アップではなく、募集で不利にならないための整備として考える方が現実的です。

無料インターネットで家賃差を狙う場合は、1戸だけで回収月数を考えません。
初期導入費や月額の回線・保守費は建物全体にかかり、増収は稼働している戸数で変わるためです。

月間純増収 = 稼働戸数 × 1戸あたりの家賃差 - 月額回線・保守費

初期費用の回収月数 = 初期導入費 ÷ 月間純増収

次の表は、稼働率90%、1戸あたりの家賃差を500円または1,000円と置いた計算例です。実際の家賃差や稼働率を予測するものではなく、戸数で増収の規模が変わることを確認するためのものです。

総戸数 稼働率 稼働戸数の目安 1戸あたり500円の月間増収 1戸あたり1,000円の月間増収
8戸 90% 7.2戸 3,600円 7,200円
20戸 90% 18戸 9,000円 18,000円

表の金額は、月額回線・保守費を差し引く前の増収イメージです。月間純増収が0円以下なら、この式では初期費用を回収できません。

その場合は、家賃アップではなく空室短縮や退去防止の効果を別に検討します。

初期費用、月額費用、利用期間、既設配管の利用可否、各戸までの配線方法は物件ごとに異なります。

通信事業者と管理会社から、初期費用と月額費用を分けた見積を取り、式に代入して比較しましょう。

管理会社には、設備あり・なしで比較できる類似物件、募集開始日、問合せ数、内見数、申込数を確認します。
募集賃料だけでなく、どの条件で反応が出ているかを見ましょう。

目的2:家賃を据え置いて、空室を短くできるかを見る

設備の価値が「選ばれる理由」になるなら、家賃を上げずに空室を短くする方が収益に効く場合があります。

このときに比べるのは、退去から成約までの総日数ではありません。設備を追加したことで、追加的にどれだけ早く決まる見込みがあるかです。

募集開始後は、設備の有無だけで効果を断定しません。写真、賃料、初期費用、入居可能日、広告料などを同時に動かした場合は、どの施策が反響へ影響したのかを管理会社と振り返ります。

目的3:退去防止なら、避けられる費用も並べる

入居中の設備改善は、次の募集に備えるだけでなく、住み替えの候補から外れにくくする目的でも行われます。

退去を一度防げたときの価値は、家賃収入だけではありません。
原状回復、募集広告、空室期間、入退去対応の手間も確認対象です。

ただし、設備を付ければ退去しないとは言えません。転勤、家族構成、通勤先、家賃水準など、退去理由は一つではないためです。

直近の解約理由、入居者からの要望、競合物件の設備を確認し、退去理由と関係のある改善かを見極めます。

管理会社と決めておきたい、設備投資の確認順

設備投資を「人気だから」で終わらせず、次の順で比較します。

  1. 入居者像を決める:車の保有、在宅勤務、防犯、荷物の受取りなど、誰に選ばれたい部屋かを整理する。
  2. 競合を比べる:家賃、面積、築年数、駐車場、設備、初期費用が近い物件を複数並べる。
  3. 目的を一つ選ぶ:家賃アップ、空室短縮、退去防止のうち、今回最も重視する効果を決める。
  4. 費用を分ける:初期導入費、月額費用、保守・交換費、募集条件を変える費用を分けて記録する。
  5. 見直す日を決める:募集開始後に問合せ、内見、申込、見送り理由を確認する日を決める。

設備投資は、人気ランキングを当てにいく作業ではありません。
物件で何を改善したいのかを決め、戸数・費用・反響を記録する資産管理です。

家賃を上げられるかだけでなく、空室をどこまで短くできるか、退去・再募集を一度でも減らせる余地があるかを分けて比べると、次の投資も判断しやすくなります。

 

参考資料:アットホーム「不動産のプロに聞いた!『2025年 問合せが多かった条件・設備~賃貸編~』ランキング」、SUUMO「便利な使い方 賃貸編」

 

次のアクション

一部の記事では、より具体的な内容を会員限定で公開しています。