コラム

沖縄の住宅市場、本当に底打ちした?2025年12月の着工データを読み解く

目次

沖縄の賃貸住宅市場、本当に回復しているの?

「沖縄の家賃相場、これから上がる?」
そんな疑問を持つ方も多いはず。

実は公的統計に答えが隠れています。
新設住宅の着工数を見ると、市場の今が分かります。

今月は特に注目すべきデータが揃いました。

まず結論から。2025年12月の注目データ

2025年12月の沖縄県の住宅着工は、明確な回復サインを示しました。

3つのポイントを先にお伝えします。

① 賃貸住宅(貸家)の着工は607戸
前の年の同じ月と比べると、+88.5%の大幅増です。

② 全住宅の着工は988戸
前年比+15.2%で、4か月連続のプラスが続いています。

③ 長期でみると、着工数と世帯増加数の比率は1.1倍
「住宅の供給と需要がほぼ均衡している」水準です。

【月次】:賃貸住宅(貸家)の着工動向

2025年7月が「底」だった

ではなぜ、今回の607戸という数字が重要なのでしょうか。

2025年7月、賃貸住宅の着工はいちど底を打ちました。
そのときの3か月移動平均(直近3か月の平均)は305.7戸でした。

それが2025年12月には510.7戸まで回復。
わずか5か月で約67%も上昇したことになります。

今月の主要指標

指標
対象月 2025-12
貸家着工戸数 607 戸
総床面積 34,932 ㎡
(戸当たり 57.5 ㎡/戸)
貸家比率(全住宅比) 61.4%
(3か月移動平均: 52.5%)
3か月移動平均 510.7 戸
(前年同期比: +22.8%)
前年同月比 +88.5%

直近12か月の貸家着工戸数

つまり、月ごとのデータを見ると回復の流れが分かります。
3か月移動平均は7月から一貫して右肩上がりです。

年月 着工戸数 総床面積
(㎡)
戸当たり
(㎡/戸)
貸家比率 3か月移動平均 前年同期
3か月移動平均比
2025-01 268 14,910 55.6 51.3% 356.7 -8.7%
2025-02 273 15,225 55.8 45.1% 287.7 -16.5%
2025-03 510 32,598 63.9 44.2% 350.3 +15.1%
2025-04 494 28,774 58.2 47.8% 425.7 +22.7%
2025-05 162 10,473 64.6 39.9% 388.7 -9.3%
2025-06 302 19,155 63.4 46.9% 319.3 -40.1%
2025-07 453 23,542 52.0 58.0% 305.7 -45.8%
2025-08 346 19,012 54.9 42.4% 367.0 -28.5%
2025-09 639 29,602 46.3 60.6% 479.3 -0.3%
2025-10 541 29,571 54.7 52.3% 508.7 +17.6%
2025-11 384 23,340 60.8 43.9% 521.3 +9.8%
2025-12 607 34,932 57.5 61.4% 510.7 +22.8%

3か月移動平均の推移(直近6か月):305.7 → 367.0 → 479.3 → 508.7 → 521.3 → 510.7

今月実績(607戸)は3か月移動平均を+18.9%上回っています。
月ごとの変動は大きいですが、基調は上向きです。

【月次】:全住宅の着工動向

4か月連続プラスが意味すること

賃貸だけでなく、市場全体でも回復が確認できます。

全住宅(持家・貸家・分譲・給与住宅の合計)の着工は988戸
前年比+15.2%で、2025年9月から4か月連続のプラスです。

単月と3か月移動平均の差が小さいことにも注目してください。
これは「安定した回復」を示すサインです。

今月の主要指標

指標
対象月 2025-12
全住宅着工戸数 988 戸
総床面積 74,896 ㎡
(戸当たり 75.8 ㎡/戸)
3か月移動平均 966.0 戸
(前年同期比: +14.5%)
前年同月比 +15.2%

直近12か月の全住宅着工動向

7月の底値(610.3戸)から5か月で3か月移動平均は966.0戸まで回復。
上昇幅は約+58%になります。

年月 全住宅着工 総床面積
(㎡)
戸当たり
(㎡/戸)
前年同月比 3か月移動平均 前年同期比
3か月移動平均比
2025-01 522 41,219 79.0 -32.0% 715.3 -19.1%
2025-02 605 48,352 79.9 -5.5% 661.7 -20.9%
2025-03 1,155 96,076 83.2 +81.0% 760.7 +11.5%
2025-04 1,034 81,155 78.5 +21.4% 931.3 +31.2%
2025-05 406 35,005 86.2 -49.5% 865.0 +13.1%
2025-06 644 49,713 77.2 -33.1% 694.7 -20.4%
2025-07 781 55,397 70.9 -18.2% 610.3 -32.7%
2025-08 816 57,883 70.9 +9.7% 747.0 -15.8%
2025-09 1,055 72,227 68.5 +30.2% 884.0 +5.7%
2025-10 1,035 77,810 75.2 +14.2% 968.7 +18.1%
2025-11 875 69,883 79.9 +14.2% 988.3 +19.5%
2025-12 988 74,896 75.8 +15.2% 966.0 +14.5%

3か月移動平均は1,000戸の大台に迫っています。
次月(2026年1月)に1,000戸台に到達できるかが注目点です。

【年次】:長期トレンドで見る需給バランス

「過供給の時代」は終わった?

沖縄の住宅市場を理解するには、長期の視点が欠かせません。

「着工/世帯純増倍率」という指標があります。
世帯が1つ増えるのに何戸建てたか、を示す数字です。

2013年には2.4倍もありました。
つまり、世帯増より住宅が多く作られていたのです。

それが2025年には1.1倍まで低下。
供給と需要がほぼ釣り合う「均衡状態」に近づいています。

年次トレンドデータ(2007〜2025年)

※ 着工/世帯純増が1.0倍を超えると「供給過多リスク」、
1.0倍を下回ると「供給不足」の目安。世帯純増≤0の年はN/A。

人口
(万人)
世帯数
(万)
世帯純増 全住宅着工 うち貸家 総床面積
(㎡)
戸当たり
(㎡/戸)
着工/世帯純増(
倍)
2007 137.3 50.2 5,972 10,876 7,307 497,955 68.1 1.8
2008 137.7 50.8 5,666 12,300 7,570 472,570 62.4 2.2
2009 138.5 51.4 6,133 11,747 8,292 546,683 65.9 1.9
2010 139.3 52.0 6,324 10,709 7,381 452,286 61.3 1.7
2011 140.3 52.9 8,924 11,828 7,547 476,517 63.1 1.3
2012 141.2 53.6 7,257 12,713 8,253 496,611 60.2 1.8
2013 141.9 54.3 6,812 16,618 10,772 640,892 59.5 2.4
2014 142.6 55.1 7,541 15,426 10,914 637,717 58.4 2.0
2015 143.4 56.0 9,699 16,136 10,726 553,986 51.6 1.7
2016 144.2 57.1 11,067 16,201 11,135 551,688 49.5 1.5
2017 144.7 58.1 9,939 16,591 11,263 546,466 48.5 1.7
2018 145.3 59.2 10,667 16,803 11,282 530,020 47.0 1.6
2019 146.1 60.5 12,528 15,098 9,227 470,078 50.9 1.2
2020 146.7 61.5 10,083 10,703 5,683 317,123 55.8 1.1
2021 146.9 62.3 8,455 9,668 4,399 240,276 54.6 1.1
2022 146.9 63.2 8,919 9,179 3,647 225,547 61.8 1.0
2023 146.8 64.1 9,266 10,183 4,417 262,924 59.5 1.1
2024 146.7 65.1 10,027 9,703 5,202 281,336 54.1 1.0
2025 146.6 66.0 8,645 9,916 4,979 281,134 56.5 1.1

全国との比較で見えてくること

「沖縄と全国、どちらが回復が進んでいるの?」

2025年の沖縄の貸家指数(2020年=100)は87.6
一方、全国は105.9と100を超えています。

つまり沖縄は全国より供給が少ない状態が続いています。
ただし過剰供給の時代(2013年ピーク)と比べれば、格差は大幅に縮小しています。

※ 指数は2020年=100。貸家比率前年差は百分率ポイント差。

総着工指数
(沖縄)
総着工指数
(全国)
貸家指数
(沖縄)
貸家指数
(全国)
貸家比率
(沖縄)
貸家比率
(全国)
貸家比率前年差
(沖縄)
貸家比率前年差
(全国)
2007 101.6 130.1 128.6 102.6 67.2% 29.7% -1.6% -1.4%
2008 114.9 134.1 133.2 103.8 61.5% 29.1% -5.6% -0.6%
2009 109.8 96.7 145.9 92.8 70.6% 36.1% +9.0% +7.0%
2010 100.1 99.7 129.9 99.5 68.9% 37.5% -1.7% +1.4%
2011 110.5 102.3 132.8 99.6 63.8% 36.6% -5.1% -0.9%
2012 118.8 108.3 145.2 101.6 64.9% 35.3% +1.1% -1.3%
2013 155.3 120.2 189.5 115.7 64.8% 36.2% -0.1% +0.9%
2014 144.1 109.4 192.0 93.0 70.8% 32.0% +5.9% -4.2%
2015 150.8 111.5 188.7 92.4 66.5% 31.2% -4.3% -0.8%
2016 151.4 118.6 195.9 95.3 68.7% 30.2% +2.3% -0.9%
2017 155.0 118.3 198.2 92.7 67.9% 29.5% -0.8% -0.7%
2018 157.0 115.6 198.5 92.3 67.1% 30.1% -0.7% +0.6%
2019 141.1 111.0 162.4 94.1 61.1% 31.9% -6.0% +1.8%
2020 100.0 100.0 100.0 100.0 53.1% 37.6% -8.0% +5.7%
2021 90.3 105.0 77.4 93.1 45.5% 33.3% -7.6% -4.3%
2022 85.8 105.4 64.2 112.5 39.7% 40.1% -5.8% +6.8%
2023 95.1 100.5 77.7 112.1 43.4% 42.0% +3.6% +1.8%
2024 90.7 97.2 91.5 111.5 53.6% 43.2% +10.2% +1.2%
2025 92.6 90.8 87.6 105.9 50.2% 43.9% -3.4% +0.7%

着工密度の比較(人口・世帯ベース)

数値が高いほど住宅供給圧力が強く、過剰供給リスクが高い指標です。

沖縄は2013年に世帯1万当たり305.9戸とピークを記録しました。
2025年は150.2戸まで縮小し、全国(127.3戸)との格差も大幅に縮小しています。

※ 人口・世帯数は住民基本台帳(沖縄: 10月1日時点, 全国: 1月1日時点で代用)。

人口1万人当たり
(沖縄)
人口1万人当たり
(全国)
世帯1万当たり
(沖縄)
世帯1万当たり
(全国)
2007 79.2 82.8 216.6 211.4
2008 89.3 85.6 242.3 215.6
2009 84.8 61.8 228.6 153.7
2010 76.9 63.5 205.9 156.8
2011 84.3 65.3 223.5 159.9
2012 90.1 69.2 237.0 168.2
2013 117.1 76.9 305.9 185.6
2014 108.2 70.1 280.1 167.9
2015 112.6 71.5 287.9 170.1
2016 112.4 76.2 283.5 179.5
2017 114.6 76.1 285.3 177.5
2018 115.6 74.5 283.8 172.0
2019 103.3 71.7 249.7 163.8
2020 72.9 64.9 174.1 146.4
2021 65.8 68.2 155.1 152.4
2022 62.5 68.8 145.2 151.6
2023 69.3 65.9 158.8 143.3
2024 66.1 64.0 149.0 137.3
2025 67.6 60.1 150.2 127.3

まとめ:この回復は本物か?

2025年12月の沖縄住宅市場は、回復の継続を示しました。

賃貸の底打ちから5か月で+67%の回復、全住宅の4か月連続プラス。
数字は確かに上向いています。

ただし、一点だけ注意が必要です。

賃貸の前年比+88.5%は、昨年12月が「低かった」ことの反動でもあります。
3か月移動平均が500戸超を安定的に維持できるかを見ていく必要があります。

次月(2026年1月)に注目すべき指標は2つです。

① 3か月移動平均が500戸超を維持できるか(賃貸住宅)
② 3か月移動平均が1,000戸台に到達できるか(全住宅)

さらに長い目で見れば、沖縄の人口・世帯数の動向も重要です。
「世帯が増え続ける沖縄」という前提が続くかどうか。
それが住宅市場の構造的な方向性を左右する鍵となります。

今後も毎月の着工統計を追いながら、沖縄不動産市場の動向をお伝えします。

 


出典: 沖縄県土木建築部 建築指導課 住宅着工統計(月次)、国土交通省 建築着工統計調査 住宅着工統計(e-Stat)

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