コラム

おきぎん経済研究所:県内景況・速報(2025年12月分)を読み解く

目次

以下は、おきぎん経済研究所「県内景況・速報(2025年12月分)」を一次資料として、
沖縄不動産を中長期視点で整理する ValueLab 的な判断材料として構成した記事原稿です。

(出典:おきぎん経済研究所・2026年1月28日公表)


1. レポートの要点整理

2025年12月時点の沖縄県内景況は、「拡大基調」と判断され、前月までの判断が維持されています。
個人消費では、スーパー売上高が全店・既存店ともに前年同月を上回る一方、百貨店売上高は下回りました。
新車販売台数は前年同月比で減少し、中古車販売台数は増加しています。

建設関連では、公共工事請負金額が前年同月比で増加しました。一方で、生コン・セメント出荷量は前年同月を下回っています。
民間工事や着工床面積の年度累計は、前年同期比で減少傾向が確認されます。

観光関連では、入域観光客数が前年同月比で増加し、12月としては過去最高水準となりました。
ホテル稼働率は、ビジネスホテル・シティホテルで上昇し、リゾートホテルでは低下しています。
客室単価と宿泊収入はいずれも前年同月を上回りました。

雇用面では、有効求人倍率は沖縄・全国ともに前月と同水準で推移し、完全失業率は沖縄で前月より低下しています。
企業倒産は件数・負債総額ともに前年同月を下回りました。


2. 背景にある構造・前提条件の整理

今回のレポートは「前年差」「前年同月比」を中心に構成されています。これは短期的な水準というより、前年との相対比較を通じて変化の方向性を捉えるための指標です。
そのため、単月の増減が「好調」「不調」を直接意味するものではなく、前年差の積み重なりや分野ごとの差をどう読むかが前提になります。

個人消費では、生活必需に近いスーパーと、裁量消費色の強い百貨店で動きが分かれています。
建設分野では、公共工事が増加する一方、民間着工や資材出荷量が弱含んでおり、官需と民需の温度差が存在します。

観光では、入域者数の増加とホテル単価の上昇が同時に見られますが、稼働率はホテルタイプ別に差があり、需要の質や立地による影響が示唆されます。


3. 沖縄の不動産市場にどう影響しうるか

(価格/賃料/需給/行動変化)

価格面では、公共工事の増加や観光関連の収入改善が、特定エリアや用途における土地・建物需要を下支えする可能性があります。ただし、民間着工床面積や貸家着工の年度累計が減少している点は、新規供給が一様に増えている状況ではないことを示します。

賃料面では、ビジネスホテルやシティホテルの稼働率上昇、観光客数の増加は、短期滞在需要や都市部周辺の利用動線に影響し得ます。一方で、貸家着工の減少は、将来の賃貸供給量に対する制約として解釈できます。

需給面では、「需要が強い分野」と「供給が抑制されている分野」が同時に存在しています。これは一部のエリア・物件タイプで需給の歪みが生じやすい構造とも読めます。

行動面では、新車販売減・中古車販売増といった動きから、家計や事業者がコスト感応度を意識した選択をしている可能性が示されます。これは不動産においても、「新築か既存か」「取得か保有か」といった判断に影響する前提条件になります。


4. ValueLab的な判断整理

──「売る・持つ・活かす・買う」のどれに効くか

  • 売る:観光や公共投資の影響を受けやすい立地では、外部環境の改善が価格形成にどう反映されているかを確認する材料になります。短期的な上振れより、過去数年との比較が重要です。

  • 持つ:雇用や企業倒産が安定している局面では、急いで判断を変える必要性は相対的に低く、保有コストや将来修繕を含めた中期管理の検討が軸になります。

  • 活かす:観光動線や都市部需要の変化を踏まえ、用途転換や賃貸条件の見直しを検討する際の背景資料として使えます。

  • 買う:民間着工の減少や貸家供給の抑制は、将来の供給量を読むための判断材料になります。数字は「今すぐ買う根拠」ではなく、「供給構造を理解する材料」として位置づける必要があります。


5. 今すぐ結論を出さなくていい人への読み方の提案

── 不動産市場を見る上での要点整理

今回のレポートから読み取れる市場の方向性

今回のレポート全体からは、県内経済が一方向に強い・弱いと動いているというより、分野ごとに異なる動きが同時に存在している状態が読み取れます。
個人消費や観光関連は前年同月比で増加が確認される一方、建設分野では公共と民間、着工と資材で動きに差が出ています。
このことから、沖縄の不動産市場も「全体として上か下か」ではなく、エリア・用途・需要の質によって影響の受け方が異なる局面にあると整理できます。

不動産判断において、今後意識しておきたい変化の兆し

いくつかの指標は、将来の動きを直接示すものではありませんが、変化の兆しとして意識しておく価値があります。
たとえば、民間着工床面積や貸家着工の年度累計が伸び悩んでいる点は、数年後の供給量に影響しうる前提条件として位置づけられます。
また、ホテル稼働率がタイプ別に分かれていることや、中古車需要が新車を上回る構図は、需要の選別やコスト意識の変化を示す参考材料になります。

数字よりも観測しておきたいポイント

レポートに並ぶ数値そのものよりも、「なぜその動きになっているか」「どこに差が出ているか」を観測しておくことが重要です。
具体的には、公共工事と民間工事の動きの差、観光客数と稼働率・単価の関係、消費の中身(生活必需と裁量消費)の違いなどが挙げられます。
こうした分野間のズレや組み合わせは、不動産市場においても同様に表れやすい要素です。

判断を急がない場合でも、押さえておくと役立つ視点

今すぐ売る・買うといった判断をしない場合でも、
「どの指標が先行し、どの指標が遅れて影響するのか」
「自分が関わる不動産は、どの分野の影響を受けやすいのか」
といった整理をしておくことは、後の判断を静かに支えます。

今回のレポートは、答えを出すための材料というより、考え続けるための地図として読むことで、不動産との向き合い方に余白を残すことができます。

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