コラム

修繕費の差分は縮小、那覇の修繕ペースは加速 ── 2026年3月沖縄CPI、2つの変化

目次

那覇の家賃は、今も沖縄県平均より上がっているの?

「那覇なら家賃が上げやすい」という話を聞いたことはありませんか。
でも実際に数字を見てみると、そうとは限らない場合があります。

総務省の消費者物価指数(CPI)で確認すると、
2026年3月は少し違う動きが見えてきました。

まず結論から。2026年3月の注目データ

2026年3月の沖縄CPI環境は、「差分は縮小したが、那覇プレミアムが今月は見えなかった月」です。

① 修繕費-家賃の差分は+0.50%pt(警戒)。
前月(+0.60%pt)から0.10pt縮小し、2か月続いた拡大は一時停止しました。

② 那覇市の住居CPI前年比は+1.4%で、沖縄県(+1.4%)と同水準に。
前月は那覇(+1.4%)が県(+1.2%)を上回っていましたが、今月は差が消えました。

③ 入居者負担圧力は-4.2%pt(余裕)を維持。
光熱費補助が継続中で入居者家計に余裕があり、空室リスクは現時点で低め。

データで読む、3月の沖縄不動産環境

那覇の家賃環境 ── 今月プレミアムが見えなかった理由

前月(2月)まで、那覇市の住居CPI前年比(+1.4%)は沖縄県(+1.2%)を0.2pt上回っていました。
「那覇は家賃転嫁が進んでいる」という判断の根拠の一つでした。

3月は那覇・県ともに+1.4%で並び、この差が消えました。
単月の揺らぎである可能性もありますが、
「那覇だけが転嫁できる」という状況が続くとは限らないことを示す月でもあります。

なお那覇市の総合CPI前年比は+0.9%であるため、
那覇では依然として住居(+1.4%)が総合(+0.9%)を上回っており、
那覇市内での家賃改定余地は引き続き確認されています。

入居者の家計は今どんな状態か

「入居者負担圧力」とは、食料と光熱費の前年比の合計から総合CPI前年比を引いた値です。
計算式:食料前年比(+3.2%)+ 光熱・水道前年比(-6.0%)- 総合前年比(+1.4%)= -4.2%pt

食料の上昇が+2.7%(2月)から+3.2%(3月)へ加速する中でも、
光熱費の大幅下落(-6.0%)がそれを打ち消しており、入居者の家計負担は和らいだ状態を維持しています。

余裕がある状態では、入居者が可処分所得の減少によって退去に踏み切るリスクは小さく、
空室リスクは現時点で低いと読めます。

ただし、この光熱費の下落は政府補助措置の継続によるものとみられます。
補助が縮小・終了した月から、食料高と重なって入居者負担が急反転する可能性があります。

「今は余裕があるが、補助頼みである」という前提を忘れないようにしたいところです。

修繕費インフレはなぜ問題なのか

前月(2月)の記事では、「修繕費-家賃の差分がさらに拡大するか確認が必要」と記しました。
3月の結果は+0.50%pt。前月(+0.60%pt)から縮小し、拡大は止まりました。

これは実勢家賃前年比が+1.2%(2月)→ +1.3%(3月)へわずかに改善したことによるものです。
一方で沖縄県の修繕前年比(+1.8%)自体は変わっておらず、
家賃が少しだけ追いついたという形での縮小です。

那覇市の修繕前年比が+1.9%(2月)→ +2.0%(3月)へ加速した点は引き続き注視が必要です。

修繕指数(県:152.5、那覇:145.2)からわかるように、
那覇は2020年からの累積上昇幅が県より小さいという相対優位を持っていますが、
足元の上昇ペース(前年比)では那覇が県を上回っており、その優位は徐々に縮まる可能性があります。

沖縄は台風・塩害による設備劣化が早く、修繕頻度が高い傾向があります。
修繕指数152.5という水準は、2020年時点の修繕費見込みが陳腐化している可能性を示しています。

数字で確認する

テーブル1:賃料改定余地モニター(那覇・県・全国)

指標 那覇市 沖縄県 全国
住居 前年比 +1.4% +1.4% +1.0%
総合CPI 前年比 +0.9% +1.4% +1.5%
賃改定余地 高め(住居>総合) 均衡(住居=総合)

テーブル2:修繕費インフレの現状(指数・前年比)

品目 沖縄県 那覇市
設備修繕・維持 指数(2020=100) 152.5 145.2
設備修繕・維持 前年比 +1.8% +2.0%

※ 指数の差(152.5 vs 145.2)は「2020年からの累積上昇幅の差」であり、地域間の実価格差ではありません。
那覇の累積上昇幅が県より小さいことを示しています。ただし前年比では那覇(+2.0%)が県(+1.8%)を上回っており、足元の上昇ペースは那覇が速くなっています。

テーブル3:入居者の家計耐性(品目別・入居者負担圧力)

品目 沖縄県 前年比
食料 +3.2%
光熱・水道 -6.0%
総合 +1.4%
入居者負担圧力 -4.2%pt(余裕)

※ 光熱費の下落は政府補助措置の継続によるものとみられます。補助縮小時には反転するリスクがあります。

テーブル4:実質利回り圧迫アラート(差分・アラートレベル)

項目
設備修繕・維持 前年比(沖縄県) +1.8%
実勢家賃 前年比(帰属家賃除く) +1.3%
差分(修繕 − 家賃) +0.50%pt
前月差分 +0.60%pt(縮小)
アラートレベル 警戒(縮小するも継続)

※ 差分がプラスである限り修繕費が家賃を上回るペースで上昇しており、実質利回りへの下押し圧力が継続しています。+1.0%ptを超えると「強警戒」水準です。

まとめ ── 今月のオーナー向け3点チェック

① 賃料は上がるか、空室は増えるか → 追い風(那覇限定)
那覇市内では住居CPI(+1.4%)が総合(+0.9%)を上回り、家賃改定余地は継続。
入居者負担圧力(-4.2%pt)は余裕圏。
ただし沖縄県全体では均衡しており、那覇市内の物件に限定した追い風と読むことが適切です。

② 売るべきか、持つべきか → 中立
那覇の賃料転嫁優位が今月は確認されなかった。単月の変動の可能性もあるため、来月以降の継続確認が必要。
利回り差分は+0.50%ptへ縮小したが、那覇の修繕前年比(+2.0%)が加速しており、コスト面の優位性が変化しつつある可能性があります。

③ 資金面は今月大丈夫か → 要注意
差分は前月(+0.60%pt)から縮小したものの、依然として修繕費が家賃収入を上回るペースで増加中。
修繕指数152.5(2020年比+52.5%)は、取得時計画の見直しが必要なレベルです。
修繕積立の充足度を改めて確認することが有効になりやすい月です。

 

来月(2026年4月)に確認すべき指標は2点。
「那覇の住居CPIが再び県を上回るか(プレミアム回復の確認)」と
「那覇市の修繕前年比(現在+2.0%)がさらに加速するか、横ばいに転じるか」です。

修繕費が家賃収入の伸びを上回り続けるとき、実質利回りは静かに下がり続けます。
差分が縮小した今月を安心材料として終わらせず、積立の水準を確認してみませんか?

出典:総務省「消費者物価指数 地方版 2026年03月」(指数基準年:2020年=100、品目別データ:表-7 那覇市、表-8 沖縄県)。
本記事は公開情報に基づく情報整理であり、投資助言ではありません。個別の投資・運用判断はご自身の責任でご検討ください。

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